
公認会計士として経験を積んできたなかで、「このままこの職場で働き続けていいのだろうか」と漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、公認会計士が転職を考える理由はさまざまで、キャリアアップを目指す方もいれば、ワークライフバランスを重視する方もいます。
本記事では、公認会計士によくある5つの転職理由から、ミスマッチを招く危険な動機、面接での伝え方、転職成功のステップまで詳しく解説します。
目次
公認会計士の主な転職理由5選
公認会計士が転職を考える背景には、キャリアの成長や働き方の見直しなど、さまざまな理由があります。ここでは、よくある転職理由を5つ紹介します。
スキルの幅を広げたいから|監査業務以外の業務にチャレンジしたいから
例えば、監査法人で監査業務に携わる中で、「監査以外の業務にも挑戦したい」と考えるようになる公認会計士は少なくありません。
監査業務では財務諸表の適正性を確認する役割が中心ですが、その過程で会計知識や企業理解が深まるにつれ、より経営に近い領域や幅広いフィールドで活躍したいと考えるようになるのは、ごく自然な流れといえるでしょう。
「スキルの幅を広げたい」という転職理由は、監査法人からFASや会計コンサル、投資銀行など、監査の専門性を活かせる隣接領域へと、監査の専門性を起点にキャリアの幅を広げていく、異業種転職を希望する方にも多く見られます。
実際に、FASでM&Aのデューデリジェンスに携わりたい方や、事業会社の経営企画部門で経営戦略の立案に関わりたい方など、目指す方向性は人それぞれです。
監査業務で培った専門性を土台に新たな領域へ挑戦する姿勢は、転職市場においても重要なポイントとなります。
年収アップしたいから
例えば、監査法人は一般的に、スタッフ、シニアスタッフ、マネージャー、シニアマネージャー、パートナーといった階層構造があり、役職に応じて報酬水準も段階的に上がっていく仕組みです。
ただし実際には昇進枠や評価制度、配属領域によって昇給ペースに差が生じやすく、「年収が思うように上がらない」と感じるケースも少なくありません。
こうした状況から、現在所属する法人に在籍し続けても大幅な年収アップが見込みにくいと判断し、より高い報酬水準を求めて転職を選択する公認会計士もいます。
年収水準や報酬の伸びを重視する方にとって、転職はキャリアと収入のバランスを見直す有効な選択肢の一つといえるでしょう。
経営視点、事業会社視点で業務に関わりたいから
監査業務に携わる中で、「もっと経営に近い立場で企業に関わりたい」「事業会社の視点で意思決定に関与したい」と感じるようになる公認会計士も少なくありません。
監査では、あくまで第三者の立場から財務諸表の適正性を確認する役割を担いますが、その一方で、数値の背景にある事業構造や経営判断に触れる機会も多くあります。
そうした経験を重ねる中で「チェックする側」ではなく、「意思決定に関わる側」として企業成長に貢献したいと考えるようになる方も多いのです。
実際にこうした思いから、経営企画や財務、FAS、会計コンサルティングなど、経営視点・事業会社視点で業務に関われるポジションを志向する方が多く見られます。
監査で培った会計知識や企業分析力を土台に、より経営に近いフィールドへとキャリアの幅を広げたいという希望は、公認会計士ならではの強みを活かした転職理由の一つといえるでしょう。
独立に向けて必要な経験を積みたいから
将来的に税理士業務を中心に独立開業したい場合、監査業務の経験だけでなく、税務の実務経験を積むことが重要です。
しかし、監査法人での監査業務だけでは、税務に関する知識やスキルを十分に身につけることができません。
そこで、独立前のステップとして会計事務所や税理士法人で税務の経験を積むことを目的に転職するケースがあります。
主に中小企業を相手にした税務申告や税務相談といった業務を経験し、独立後に必要な実務スキルや顧客対応力を磨くこともできます。
ワークライフバランスを整えたいから
ライフステージの変化によって、仕事への向き合い方や優先順位が変わるのは、業界や職種に関係なく、自然なことです。
そうした変化の中で、転職理由として挙がりやすいのが「ワークライフバランスを整えたい」という考え方でしょう。
ただし注意したいのは、ワークライフバランスとは「仕事よりもプライベートを優先すること」ではないという点です。
仕事とプライベートのどちらかを犠牲にするのではなく、両方をバランスよく充実させる状態を指します。
そのため、自分にとって「仕事が充実している状態」「プライベートが満たされている状態」が何を意味するのかによって、選ぶべきキャリアの方向性は大きく変わってきます。
また、ワークライフバランスは単純に「業界」や「職種」だけで決まるものではありません。
たとえば大手監査法人では、リモートワークやフレックスタイム制が浸透しており、業務の進め方を自ら調整しやすい環境が整っているケースも多く見られます。
ワークライフバランスを考えるうえで重要なのは、現在の就業環境や担当業務、組織の運用が、自身の望む働き方と合っているかどうかを見極めることです。
繁忙期の見通し、業務裁量の大きさ、制度が実際に機能しているかといった点を、総合的に捉える必要があります。
そのうえで、もし今の環境やキャリア形成の方向性が自分の考えと合わないと感じる場合には、別のキャリアを選択することも一つの考え方です。
業務スケジュールを把握しやすく、自分のペースで専門性を発揮できる環境であれば、より納得感のある働き方を実現しやすくなるでしょう。
【要注意!】転職後のミスマッチが起こりうる公認会計士の転職動機

転職は新しいキャリアへの一歩ですが、動機が曖昧なまま進めてしまうと、転職後に「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。
特に以下のような転職動機は、ミスマッチを招きやすいため注意が必要です。
周りが転職していて自分も転職したほうがいいかなと思う
監査法人で数年経験を積むと、同期や先輩が次々と転職していくのを目にする機会が増えます。
「みんな転職しているから自分も転職したほうがいいのではないか」という漠然とした焦りから転職を考え始める方もいますが、これは“危険な動機”です。
周囲の転職はあくまでその人自身のキャリアプランに基づいた判断であり、あなたにとって正解かどうかは別問題です。
明確な目的がないまま転職すると、転職先でやりがいを見出せず早期退職につながるリスクがあります。
転職した友人や同期の待遇がよくてうらやましい
転職した友人や同期から年収が上がったという話を聞くと、「自分も転職すれば待遇が良くなるのではないか」と考えてしまいがちです。
しかし、年収や役職だけを重視して転職先を選ぶと、業務内容や企業文化とのミスマッチが起きやすくなります。結果として、短期間で転職せざるを得ず、年収が下がってしまう可能性もあります。
高額の報酬に惹かれて転職したものの、業務内容や企業風土などの環境が自分に合わず、すぐに退職してしまうケースは少なくありません。
他人の成功体験が自分にも当てはまるとは限らないため、表面的な情報だけで判断しないことが重要です。
転職すれば残業が少なくなる
監査法人の繁忙期の長時間労働から逃れたいという理由だけで転職を考えている場合は注意が必要です。
事業会社の経理部門など比較的業務量が安定している職場に転職すれば残業が減る可能性はありますが、すべての転職先がワークライフバランスに優れているわけではありません。
特にベンチャー企業やIPO準備企業、FASなどは監査法人以上に激務になることも珍しくありません。残業を減らしたい場合は、転職活動の段階で実際の労働環境を詳しく確認することが欠かせません。
公認会計士も要チェック!面接で転職理由を伝えるときの3つのポイント

転職活動において、面接で転職理由を聞かれることは避けられません。転職理由の伝え方次第で、面接官に与える印象は大きく変わります。
ここでは効果的に伝えるための3つのポイントを解説します。
ネガティブな理由はポジティブな表現に変換する
転職理由が「残業が多い」「人間関係が合わない」といった内容であっても、そのまま面接で伝えるのは避けましょう。
公認会計士に限らず、転職の選考ではスキルだけでなく、業務への向き合い方や職務に対する責任感も重視されます。ネガティブな発言は、「不満があればすぐに辞めてしまうのでは」といった印象を与えかねません。
また、現職への不満だけを転職理由として述べるのも望ましくありません。面接官は、不満を感じた背景だけでなく、その課題に対してどのような改善や工夫を行ってきたのかを見ています。
自らの行動や取り組みをあわせて伝えることで、前向きで説得力のある転職理由になります。
例えば、業務範囲の狭さに課題を感じた場合でも、不満を述べるのではなく、改善提案や業務効率化に取り組んだ経験とあわせて伝えましょう。
そのうえで、志望企業でどのように経験を広げ、成長していきたいのかまで説明できると、転職理由に一貫性が生まれます。
具体的には、監査法人での多忙な経験を理由に転職を考えている場合、回答例は以下のようにポジティブに言い換えることができます。
回答例:
- 「さまざまな業界の監査業務を担当する多忙な業務環境の中で、正確性を保ちながら効率的に成果を出す方法を学んだので、この経験を活かして御社の事業成長に貢献したいと考えています」
- 「次の職場では、これまでのさまざまな業界・業種の監査業務を通じて培った迅速な判断力や優先順位の設定力を活かし、より戦略的かつ効率的に業務を進めたいと考えています」
公認会計士としての経験や専門性を踏まえつつ、「次の職場でどのように活躍したいか」までセットで伝えることで、説得力が格段に高まります。
自身の短期~長期的なキャリアプランを言語化できるようにする
転職理由を説明する際は、短期的に何を実現したいのか、そして中長期的にどのようなキャリアを描いているのかを整理して伝えることが重要です。
現職で抱える課題や不満も、自身のキャリアプランと結びつけて説明することで、ポジティブな転職理由になるのです。
まず、短期的にはこれまでの経験を活かしつつ、より幅広い業務や新たな分野に挑戦し、専門性を深めていく姿勢を示すとよいでしょう。
そのうえで中長期的には、将来的にどのような役割を担いたいのか、どのレベルまで成長したいのかといったビジョンを示します。
短期の挑戦が中長期の目標につながっていることを説明できれば、キャリアの一貫性が伝わり、説得力のある転職理由になります。
回答例:
「私は将来、企業の成長局面に深く関与し、経営判断に近い立場で価値提供ができる会計・ファイナンスの専門家を目指しています。そのため、短期的には、これまで培ってきた経理・財務の知識や数値を読み解く力を活かしながら、より多様なビジネスや課題に向き合い、対応力を高めたいと考えています。
現職では、製造業や小売業など複数の上場企業の監査に携わり、財務諸表分析や内部統制評価を中心に経験を積んできましたが、比較的事業環境の変化が少ない企業を担当することが多く、成長フェーズの異なる企業にも関わりたいと考えるようになりました。御社は、IPO準備企業を含む多様なクライアントを支援されており、これまでの監査経験を活かしながら新たな挑戦ができる環境だと感じ、志望いたしました。」
転職理由と志望動機のストーリーを一致させる(一貫性を持たせる)
先に述べた2つ目のポイントともつながりますが、転職理由と志望動機には一貫性が必要です。
例えば、転職理由が「監査以外の業務にチャレンジしたい」であるにもかかわらず、志望動機が「御社の安定した経営基盤に魅力を感じた」とだけ伝えると、面接官は「本当にうちで働きたいのだろうか」と疑問を持ってしまいます。
ほかにも、監査法人に勤務する公認会計士の場合、監査業務で培った財務諸表分析能力や内部統制の知見、企業評価力などの専門スキルが志望先でどう活かせるかをストーリーとしてつなぐことが重要です。
回答例:
「監査法人で上場企業の監査を通じて財務分析力を磨いた経験を活かし、御社の経営企画・M&A支援業務に挑戦したい」
といったように、転職理由と志望動機を一本の流れにまとめることで、説得力が格段に増します。
転職理由を活かして転職を成功に導く4つのステップ
転職を成功させるためには、転職理由を明確にするだけでなく、計画的に準備を進めるようにしましょう。ここでは転職成功のための4つのステップを紹介します。

(CPASSキャリア編集部 作成)
長期的なキャリアプランの設計もしくは見直しをする
転職を考える前に、まず自分のキャリアプランを明確にすることが重要です。はじめに自身が理想とするキャリアは何なのか、ゴールを明確にしましょう。
そしてそのキャリアを実現するためには、5年後、10年後にどのようなポジションで、どのような業務に携わっていればいいのかを具体的に設定しましょう。
最終的なゴールから逆算して、今回の転職がキャリアのステップとして適切かどうかを判断することが重要です。
例えば、スタートアップ企業のCFOを目指す場合、監査法人で会計・監査の専門性を身につけた後(〜5年)、総合系コンサルティングファームでマネージャー職まで昇進し、戦略立案やM&A、資金調達支援を経験する、といったように明確にキャリア設計をしましょう。
長期的な視点を持つことで、目先の条件だけに惑わされず、本当に自分の成長につながる転職先を選ぶことができます。
キャリアの棚卸しをする
長期的なキャリアプランを立てたら、これまで担当してきた業務や身につけた専門スキルを振り返り、棚卸しをしましょう。
担当したクライアントの業種や規模、関わった業務の種類、達成した成果、培ったスキルなどを具体的に洗い出します。
業務経験やスキルの棚卸しを行うことで、自分の強みや市場価値を客観的に把握することができます。
この際、単に業務を列挙するのではなく、自分が何を考え、どのように貢献したかという観点まで掘り下げることがポイントです。
案件内容や関与範囲を具体化することで、経験の再現性が伝わりやすくなります。
キャリアの棚卸しは、職務経歴書の作成や面接での自己PRにも直結する重要な作業です。単なる業務列挙で終わらせず、「何を考え、どう貢献したのか」まで丁寧に整理しておきましょう。
転職理由を明確にし整理する
キャリアの棚卸しができたら、その内容を踏まえて転職理由を改めて言語化し、整理していきましょう。
「監査に飽きたから」といった感覚的な理由ではなく、「現職までの業務を通じて何を身につけ、次にどのような価値提供をしたいのか」まで掘り下げて考えることが重要です。
例えば、「財務諸表のチェックや内部統制評価を通じて培った専門性を、より経営や事業の意思決定に近い立場で活かしたい」「クライアントに対して『指摘する側』ではなく『伴走する側』として関わりたい」といった前向きな理由を用意しておきましょう。
転職理由を言語化し、整理することで、自分が本当に求めている環境や役割が明確になり、結果として入社後のミスマッチを防ぐことにもつながります。
周りに相談したり、セミナーに参加して視野を広げる
転職を成功させるためには、一人で考え込まず、周囲に相談したり、セミナーや勉強会に参加したりして視野を広げることが大切です。
頼れる先輩や同僚に話を聞くことで、公認会計士としてのキャリア事例に触れられ、自分では気づかなかった選択肢が見えてくることもあります。
また、セミナーや勉強会に参加することで、業界の最新トレンドやキャリア形成に役立つ情報を得られるだけでなく、同じような関心を持つ人との出会いを通じて人脈を広げることにもつながります。
こうした場で出会った他業種の方との会話からは、他業種の視点を知ることができ、自身の強みやアピールポイントを客観的に見直すきっかけにもなるでしょう。
そして、転職エージェントに話を聞いてみるのも有効です。
複数のエージェントと面談し、メリットだけでなく注意点やリスクについても丁寧に説明してくれるかを見極めながら、自分に合った情報源として活用するとよいでしょう。
公認会計士の転職なら「CPASSキャリア」にお任せください
公認会計士の転職を成功させるためには、業界に精通した専門家のサポートが心強い味方になります。
「CPASSキャリア」は、会計ファイナンス人材に特化した転職エージェントとして、公認会計士の転職支援に豊富な実績を持っています。
「CPASSキャリア」では、公認会計士資格を保有するキャリアアドバイザーが在籍しており、監査法人での業務内容や公認会計士特有のキャリアパスを深く理解した上でアドバイスを提供します。
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転職理由がまだ整理できていない段階からでも、客観的な視点で一緒にキャリアを棚卸ししていきます。
あなたのキャリアの可能性を一緒に考えるパートナーとして、「CPASSキャリア」がサポートいたします。
まとめ
公認会計士が転職を考える理由は多岐にわたり、どれもキャリアをより良い方向に進めたいという前向きな気持ちの表れです。
一方で、「周りが転職しているから」「友人の待遇がうらやましいから」といった漠然とした動機で転職を決めると、ミスマッチを招くリスクがあります。
転職は自分自身のキャリアビジョンに基づいて判断をすることが大切です。
転職を成功させるためには、長期的なキャリアプランの設計、キャリアの棚卸し、転職理由の明確化、そして業界特化型のエージェントの活用が有効です。
「CPASSキャリア」では、公認会計士のキャリアの可能性を一緒に考え、最適な転職先を見つけるサポートを提供しています。転職を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。



記事の監修者
松岡 宏紀
2007年、公認会計士試験に合格。EY新日本有限責任監査法人にて、監査・アドバイザリー業務に加え、社内外での研修講師や研修プログラムの作成・管理などに従事。現在、CPAエクセレントパートナーズ株式会社において、コンテンツの作成、監修を担当。