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公認会計士のキャリアについて

公開日:2024.05.23

最終更新日:2024.09.05

公認会計士は多様性のあるキャリア展開が魅力の職業です

会計士試験に合格した方の9割以上が監査法人からキャリアをスタートすることになると思いますが、そこから先のキャリアの展開は人によって大きく異なります。その多様性が公認会計士という資格の特徴であり、面白さだと言えるのではないでしょうか。

まず、働く場所という意味においては、監査法人、会計事務所/税理士法人、各種アドバイザリー/コンサルティングといった「プロフェッショナルファーム」での仕事と、大手企業、ベンチャー企業、外資系企業などの経理・財務、経営企画、内部監査等の「組織内(インハウス)」の仕事の2つに領域は分かれてきます。

そして、その領域をどのようなルートで、どのような職種を経て歩んでいくかによって、その後のキャリア展開も大きく変わってきます。そのため、自分のキャリアのゴールを描き、そこから逆算してどのようなキャリアプランを練るかが非常に重要な職業であるとも言えるのです。

また、合格した年齢によっても、その後の選択肢の数と可能性が大きく異なる職業でもあります。具体的には、25歳、30歳、35歳、40歳、45歳といったように5年おきにキャリア展開の節目の時期が訪れますので、実年齢も意識した上で現実的な選択肢を検討していくことも重要です。特に、35歳以降は、マネジメント能力、特定領域のスペシャリティ、案件獲得をする営業力等も問われるようになっていきますので、自身の能力や特性も加味しながら自身の進路を設定していく必要もあります。

それから、高年収を狙えるのも公認会計士の素晴らしい魅力の一つです。監査法人に就職すれば最初から年収500万円以上が普通ですし、平均年収は少なく見積もっても700~800万円程度のラインは確保できると思います。また、キャリアの選択を間違わなければ多くの方が年収1000万円以上は達成できる点も大きな魅力です。ただ、それより高い水準の年収を目指すにはそれ相応の努力とキャリアプランも大切になってきますので、多くのケースを知っている公認会計士のキャリア支援の専門家と二人三脚でキャリアプランを練ることが本当に大切だと思います。

公認会計士の主な職場

公認会計士の活躍の場は非常に幅広いと言えますが、そうは言ってもメインになってくる職場はある程度、カテゴリー分けすることが可能です。ここでは、代表的なカテゴリーについて軽く触れていきたいと思います。

監査法人

言わずと知れた、多くの公認会計士が集う法人となります。会計監査をはじめ、アドバイザリーなどの非監査業務を提供しています。Big4と呼ばれる大手監査法人、準大手監査法人、中堅監査法人、中小監査法人といったように組織規模で分類をされます。大手監査法人は超大手企業の大半をクライアントに抱えており、法人規模とクライアント規模が比例している傾向が強いと言えます。一方で、大手監査法人はクライアント規模も大き過ぎる為、企業の一部しか見られないというデメリットもあります。準大手~中小監査法人はクライアント規模も小さめで、企業全体を見渡す経験であったり、主査・インチャージ等の業務にも従事するタイミングが早いといったメリットもありますので、会計士試験に合格した年齢やその後のキャリアプランなどを良く考えた上で、就職・転職活動をすると良いでしょう。

会計事務所・税理士法人

公認会計士は税理士登録ができますので、会計事務所や税理士法人で働いている公認会計士も一定以上の割合でいらっしゃいます。将来的に士業として独立開業を目指しているという方にとっては、登龍門になるキャリアの一つと言えるのではないでしょうか。但し、会計事務所業界は玉石混合の世界とも言えますので、公認会計士にとって良い事務所かどうかをしっかりと判断する選球眼が大変重要になります。所長先生が公認会計士・税理士なのか、それとも税理士資格のみなのかによって、公認会計士への理解度や報酬水準も大きく異なってくるばかりか、仕事内容も大きく異なってくるので十分な注意が必要です。税務が主体業務にはなりますが、事業承継、組織再編、M&A、IPOなど、公認会計士が活躍し易い業務領域も多数ありますので、是非、積極的にチャレンジしてみて欲しい業界です。それにも関わらず、前述の通り、会計事務所・税理士法人は業界情報が非常に分かり難くクローズドな世界となっていますので、この業界へ転職をする場合は業界に精通した専門家に相談をすることを強くお勧めいたします。

アドバイザリー/コンサルティングファーム

公認会計士にとって最も馴染み深いのが、Big4系のFAS(KPMG FAS、EYTAS、DTFA、PwCアドバイザリー)ではないかと思います。アドバイザリー業務とコンサルティング業務の明確な線引きは非常に難しいので、ここでは同分類扱いとさせていただきますが、IFRS導入アドバイザリー、内部統制構築アドバイザリー、M&A関連サービス、IPO支援といった会計・財務系の領域が公認会計士として最も活躍し易い業務分野ではないかと思います。一方で、IT系、戦略系、またそれらを包括する総合系のコンサルファームなど、コンサル業界も非常に細かく様々な業務領域とジャンルがあります。ボストンコンサルティンググループやマッキンゼーなどはブランド的にも憧れがあり、チャレンジしたいという公認会計士の方もいらっしゃいますが、公認会計士であることが直接的に評価される業界ではなく、圧倒的なビジネスセンスや地頭の良さが求められる環境であるため、採用される方は非常に厳選されているという点に注意が必要です。

大手上場企業

一般企業の中でも、特に規模感の大きな上場企業において、公認会計士の活躍の場は多くあります。何といっても一番ニーズが高いのは経理職です。決算、国内・海外連結、有価証券報告書作成、IFRS対応、J-SOX対応、経理業務改善等があげられます。また、財務ポジションや経営企画ポジションでもニーズがあります。社内のM&A推進チーム等で活躍する公認会計士もいらっしゃいますし、定番の内部監査職もあります。もともと、大手監査法人で働いている公認会計士は大手上場企業の監査を得意としていますので、監査する側からされる側への転職ということで、非常にイメージし易いフィールドではないかと思います。会社にもよりますが、年収水準も比較的高く、ブランドイメージの良い企業も多く、就業環境が整っている会社も多いので、長く働くことができる点が魅力ではないかと思います。特に、総合商社、製造業、製薬会社といった安定感のある業界が人気です。どのような業界の会社で働くかによって、業務内容も異なってくる部分もありますので、その点は大変重要だと思います。

ベンチャー企業

シード、アーリー、レイタ―といったステージの差はありますが、ベンチャー企業は公認会計士にとっても人気の職場の一つとなっています。基本的には、IPOを目指しているベンチャー企業が多いので、そこで上場準備の実務を経験したいと考える方が多く働いています。そして、何といっても花形はCFOです。大型の資金調達をしたり、経営の根幹の担うCFOには多くの公認会計士が憧れを抱いていますし、実際に様々なタイプの公認会計士がご活躍されています。最近は世界的な金余りの状況から、ベンチャー企業への投資が活発化しているため、以前と比べると年収水準も上がってきており、ベンチャー企業へ飛び込むリスクは減少傾向にあると言えるかも知れません。しかしながら、ベンチャー企業はビジネスモデルやマーケットの変化のスピードが極めて速く、IPOができなかった場合はEXITとして事業や会社の売却といったシナリオも考えられるので、一定以上のリスクとは常に隣り合わせの職場と言えます。また、経理スタッフや管理部門スタッフとして入社したとしても、管理体制は全く整っていない企業も多いので、人事、総務、法務的な業務も一手に担う可能性があります。会計・財務等しかやりたくないというマインドの方には向かない世界です。

外資系企業

英語力があり、グローバルな世界で働きたいという方が好むのが外資系企業です。監査法人でも外資系のリファーラルをやっていた方が、クライアント企業に興味を持ち、転職をするケースなども珍しくありません。外資系企業は高いブランド力のある企業も多く、また、日経企業と比べると年収が高いという傾向もあるため、外資系でキャリアを歩み始めると一貫して外資系で働き続ける人が多いのも特徴の一つです。職種としては、やはり経理・財務系の仕事を中心に担うことになりますが、アカウンタント、コントローラー、トレジャラーといったポジションから経理財務系TOPのCFOを目指すキャリアが中心になってくると思います。また、日系大手企業同様、内部監査のポジションなどもあります。当然、外資系企業といっても大手から中小まで幅が広く、外資系中小企業になると、ベンチャー企業と同様、経理財務系以外にもその他の管理部門業務も混ざってくる場合もあります。他にも、どこの国の資本が入ってくるかによっても、文化が大きく異なります。更には、日本国からの撤退というストーリーもあり得ますので、どのような企業を選ぶかには、やはり慎重な検討が望まれます。

証券会社

金融マーケットも公認会計士が働くマーケットと言えますが、その中でも、特に証券会社は活躍の場が広いと言えるのではないかと思います。まず、大手企業同様、経理職や内部監査職といった管理部門業務のポジションもありますが、大きく異なるのはIPOとM&Aといった業務に関わるポジションが用意されているという点です。株式上場の公開引受や引受審査、M&Aのアドバイザリーを行う投資銀行部門などで活躍する公認会計士は少数ですが一定数おり、その後の華々しいキャリアに繋げている方々を見かけることも少なくありません。採用ハードルは高いと言えますが、前述の通り、一度、証券会社での実務を経験すると、その後のキャリアの展開に非常に大きな広がりが出てくるのが大きな特徴と言えるでしょう。

ベンチャーキャピタル・ファンド

活躍している方は多くはありませんが、ベンチャーキャピタル(以下、VC)やファンドで働いている公認会計士の方もいらっしゃいます。特に、ベンチャー企業への投資は近年、更に活発化していることから、大手系VCから独立系VC、大学系VCに至るまで、かなり多様なVCが登場しています。VCごとにターゲットにしているベンチャー企業も異なりますし、投資方針も異なりますので、それぞれのVCの特徴を入念に調べて自身の志向にマッチするVCを選ぶことが重要だと思われます。また、不動産投資ファンドなど色々なファンドがありますが、PEファンドで働きたいと思っている公認会計士は一定数いらっしゃいます。PEファンドも、ベンチャー投資に強いところ、事業承継案件に強いところ、IPOのEXITに強いところ、バイアウトのEXITに強いところなど、投資方針や戦略は様々です。基本的にVCもファンドも選考ハードルは極めて高く、監査法人からダイレクトに転職することは極めて難しいと言えます。また、働き方もかなりハードワークになる場合が多いので、この領域で活躍できる公認会計士は結果的に一握りの方々となります。

講師

少数派のキャリアにはなりますが、公認会計士資格スクールの講師という選択もあり得ます。論文式試験に合格後、勉強していた資格スクールでのアルバイトなどを経て、そのまま講師として公認会計士講座を教えるようになるパターンもありますし、一度、監査法人に就職してから講師を志すようになり、スクールに戻ってくるケースもあります。人に教えることが好き、人の成長を応援するのが好き、特定分野を掘り下げて極めるのが好き、分かり易い教材を作るのが好き、といった傾向が強い方にはマッチする仕事と言えるかも知れません。難関試験を共に乗り越えた教え子との絆は、まさに一生モノで、その後も長く続く素晴らしい人間関係となっていくのも魅力の一つです。

独立開業・起業

公認会計士は税理士登録もできますので、公認会計士・税理士として独立開業することが可能で、公認会計士資格の大きな魅力の一つとなっています。公認会計士事務所として独立開業することもできますが、経営を安定させるためにも税務業務のクライアントも確保した方が好ましいので、この道を歩む方の多くは、一度、会計事務所や税理士法人での勤務を経て税務実務を身に付け、独立開業するケースがほとんどです。また、士業としてではなく、CEOとして新規ビジネスで起業する公認会計士も登場し始めています。「会計×IT」といったビジネスモデルがスタンダードな切り口にはなりますが、公認会計士として得た様々な経験やアイディアを形にする手段として、起業は大きな注目を集め始めていると言える選択肢です。今まではCFOの公認会計士が多かったのですが、それと同等レベルでCEOの公認会計士が増えていく未来が予測できます。

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