公認会計士として初めての転職を考える中で「失敗しないか心配」という方は多いのではないでしょうか。
実際に、想定していた業務経験ができなかったり、転職先の組織風土と合わなかったりといった失敗例は、公認会計士に限らずよくあります。
しかし、こういった失敗は長期的なキャリア設計をきちんと行ったり、転職先や業界について入念にリサーチしたりすることで防ぐことができます。
本記事では、公認会計士を含め転職でよくある失敗例と、その失敗を防ぐための対策を解説していきます。
失敗事例にみる”転職失敗の要因”とは?
(CPASSキャリア編集部 作成)
公認会計士に限らず、現職から新しいキャリアに挑戦する際、「思っていたのと違う」という失敗に直面するケースは少なくありません。
以下では、実際に見られる事例をもとに、失敗の要因を整理していきます。
想定していた業務経験ができなかった|情報収集不足によるミスマッチ
転職での失敗事例として最も多く見られるのが、「想定していた業務経験ができなかった」というものです。
求人票には「予算策定やKPI管理、経営会議資料の作成、M&A案件への関与」といった業務内容も並んでいたので、ファイナンス領域の業務にもしっかり取り組めると想定していました。
しかし、入社後は日次業務を含む経理のルーティン対応が中心で、実際には「何でも屋」として幅広い業務を担っています。
経営陣とのセッションなどもありますが、日々の実務に追われ、自分の専門性を活かした挑戦的な業務に携われている実感はあまりありません。
数字やデータを使って経営判断を支えるような仕事を思い描いていたため、実務寄りの現状とのギャップに戸惑いを感じています。
この失敗の要因は、「リサーチ不足」です。転職先や業界について十分に情報を集めていなかったことが原因となる典型例です。
一般的にスタートアップ企業は発展途上で、バックオフィスを含め社内体制がまだ整っていないことが多く、求人票に書かれた業務内容も変動する場合があります。
一方で、体制構築から関われるなど、他の企業や業界では経験できない貴重な機会が得られるのもスタートアップならではの魅力です。
そして、今回のケースのように、日々の基本的な業務にも関わる必要があるのは、スタートアップ企業によくある「少数精鋭の組織であること」が要因です。
そのため、一人が担当する業務の幅が自然と広くなるのです。
こうした幅広い業務対応を、「実務経験が積めて自己成長につながる」と捉えるか、「やりたい業務に集中しづらい」と捉えるかは、個人の志向性によって異なります。
こうしたミスマッチを防ぐために、自分にとっての成長や希望する業務を明確にし、転職先が提示する要件や条件とすり合わせることが大切です。
そこで、自分でのリサーチはもちろん、業界特化型の転職エージェントを活用して、希望する業務に携われるか、志向に合っているかをしっかり確認する必要があります。
業務内容や職場環境だけでなく、過去に入社した公認会計士のキャリア事例をエージェントに聞くのも非常に有益です。
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思い描いた就業環境ではなかった|制度などが形骸化していて働きづらい
入社前に想定していた制度が整備されておらず、就業環境に不満を抱くケースもあります。
しかし、実際には制度を利用できる要件が非常に厳しいことがわかり、利用はできていません。社内の空気もリモートワーク制度の利用に否定的な方が多く、最近働きづらさを感じています。
この失敗の原因としては、「職場環境のチェックが不十分だったこと」が挙げられます。先述した内容と同様に、情報収集が不十分だったことが大きな要因です。
例に挙げたリモートワーク制度のほかにも、有給休暇取得やフレックスタイム制、福利厚生の利用など、制度面でミスマッチを感じるケースは少なくありません。
業務内容はもちろんですが、就業環境に関するミスマッチもよくある失敗例です。
その中でも、制度自体は存在しているものの実際にはほとんど運用されていない、いわゆる「形骸化」したケースは特に注意が必要です。
単に制度が未整備ということではなく、社内全体が、その制度自体に否定的な場合もあります。そうした場合、改善の見込みもなく、環境の変化が望めません。
このような職場環境に関する情報は、求人票や企業の公式HP、口コミだけでは実態を把握しづらいものです。
そのため、業界のコミュニティや転職エージェントへのヒアリングなどを通じて、事前にしっかり情報をキャッチアップすることが大切です。
実際に制度の運用実績について、選考時やエージェントにヒアリングをいれてみるのもおすすめです。
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組織風土に合わなかった|企業カルチャーを客観的に捉えられていなかった
「組織の文化と合わない」、つまり企業文化とのミスマッチもよくある失敗例のひとつです。
しかし、働くうちに「成果主義」の側面を非常に強く感じるようになり、大きなプレッシャーを感じるようになりました。長時間労働やタイトな納期も当たり前な環境にも疲れてしまいました。
転職での失敗例として、カルチャーのミスマッチもよく見られます。
例えば、FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)の企業カルチャーとして、「成果主義」「プロ意識が高い少数精鋭のチーム体制」「激務傾向」が挙げられます。
監査法人と同様にクライアントワークではありますが、求められる業務は高度で幅広く、年次に関係なく裁量が大きいのが特徴です。
成果主義なので、プレッシャーも大きくなりがちです。こうしたカルチャーに合わず、ストレスを抱えてしまうケースは少なくありません。
一方でこうした環境だからこそ、大きな自己成長、そしてキャリアアップが望めますし、高年収が叶うのです。
業種、そして企業によって、それぞれメリットとデメリットがあります。
自身の直感やメリットに集中するのではなく、フラットに「どんな環境なのか」を把握し、ご自身の志向やスタイルに適しているのかを判断することが重要です。
働き方や評価制度などの環境面の要件を把握するのはもちろん、「どんな人が活躍しているのか」をヒアリングしたり、自分のモデルケースになりえそうな人がいるかリサーチしてみたりするのもいいでしょう。
これらの情報収集に加え、失敗を防ぐためには徹底した「自己分析」と「他者から見た自己評価を知ること」が重要です。そこでエージェントの活用が成否を分けます。
エージェントからみた自身の強みや弱みを客観的に話してもらい、「自分を知る」ことが転職成功の近道になります。
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求人票と実態に大きな乖離があった|残業時間など求人票を鵜呑みしてしまった
求人票の記載と、実際の就業環境に乖離があるケースもあります。典型的なのは残業時間や休日出勤に関する記載に乖離があるケースです。
ところが、繁忙期の業務量は大手監査法人とほぼ同じで、ワークライフバランスを保てるようになった実感はあまり得られません。
前提として、公認会計士に限らず「残業時間」は、自身の生産性によって変動するものです。よって、求人票に記載されている「残業時間」はあくまで目安であると考えておきましょう。
前提を踏まえた上で、例えばコンサル業界においては、担当するプロジェクトやクライアントによって、残業時間が大きく変動する可能性が高くなります。
また、業種だけでなく、企業規模によっても変動の幅が大きくなる可能性が高いです。
とはいえ入社前に転職先の実情に近い情報を、可能な限り多く収集しておくことは有益です。
転職口コミサイトの情報をチェックしたり、転職エージェントにヒアリングしたりして、業界のコミュニティを活用してリサーチするといいでしょう。
将来のキャリアプランに即した転職ではなかった|事前の準備不足でキャリアとのギャップが生まれてしまった
長期的なキャリアプランを十分に考えていなかったことで、希望のキャリアから離れる転職になってしまう失敗例もあります。
一方でキャリア設計を度外視して転職してしまったため、専門性やキャリアの広がり、ステップアップするための選択肢が狭まってしまい、今後のキャリア形成に悩んでいます。
「とにかく今の会社を辞めたい」と、転職そのものを目的にしてしまうと、キャリアの幅を狭めてしまうことがあります。
今の環境に大きなストレスや不満を感じていると、長期的な視点でキャリアを考えるのは難しいかもしれません。
まずは自分のキャリアのゴールを具体化し、「その目標を達成するために必要な経験は何か」を棚卸ししましょう。
そのうえで、転職先で実際にどんな業務を担当できるのか、将来的にどのタイミングで関与できるのかをリサーチすることが大切です。
求人票や肩書きだけに惑わされず、担当業務がキャリアプランに直結しているかを見極めることも、転職成功のポイントとなります。
私たち「CPASSキャリア」は、会計ファイナンス業界に特化した転職エージェントです。
CPASSキャリアは、公認会計士資格スクール「CPA会計学院」のグループ会社として、約7,000人の会計士とつながりを持っており、その繋がりから得た非公開求人・優良求人を多く抱えています。
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公認会計士も知っておきたい!転職で失敗しないための3つのポイント
(CPASSキャリア編集部 作成)
以下の「転職で失敗しないための3つのポイント」を順番に解説します。
幅広い情報収集のソースを活用する|ネットリサーチだけでなく、キャリアアドバイザーやコミュニティを活用して入念な情報収集を
転職の失敗を防ぐのに最も大事なのは、”しっかりと情報収集をすること”です。そのためには、幅広いソースを活用する必要があります。
この”ソース”は大きく、「一次情報」と「二次情報」に分けて考えることができます。
それぞれ以下のように分類することができます。
※スマホの方は横にスクロールできます
| 種別 | 概要 | 具体例 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 一次情報 | 企業が発信した情報や、個人が直接体験して得た情報など、企業から直接取得したオリジナルの情報 |
|
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| 二次情報 | 一次情報を持つ第三者から取得できる情報 |
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一次情報を入念にチェックすることはもちろん大切ですが、それだけでは不十分です。二次情報についても幅広く収集し、多角的に検討するとよいでしょう。
なかでも、業界特化型エージェントのキャリアアドバイザーからの情報収集は、実際の採用動向や企業の内情を把握するうえで非常に有効です。
業界特化型のエージェントはその道のプロです。会計ファイナンス業界やその転職事情に詳しい人の話を聞くことで、ネットでは得られない具体的で実用的な情報を収集できます。
こうした入念な情報収集によって、転職先とのミスマッチを減らすことができるでしょう。さらに、公認会計士同士のネットワークを通じた情報収集も積極的に行いたいところです。
そこで重要なのが、会計ファイナンス人材のコミュニティへの参加です。
最新情報の取得に加え、イベントや交流会でのネットワーキング、公認会計士同士の情報交換など、多角的に情報を収集することができます。
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長期的なキャリア設計をしっかり行う|転職は手段であり目的ではありません
情報収集と並んで重要なのが、「長期的なキャリア設計」です。自身が目指す「理想のキャリアは何か」を具体的に考えることです。
例えば、スタートアップ・ベンチャー企業のCFOを目指す場合、資金調達・財務戦略などのファイナンススキルが必要不可欠です。
そこで独立系コンサルティングファームへの転職を経ることで、IFRS導入・グループ再編やM&Aといった専門案件、さらには業界横断プロフェッショナルネットワークや国際案件の経験もできます。
必然的に高度な会計ファイナンススキルを身に付けることができるのです。
このように、目の前の転職自体を目的として捉えるのではなく、長期的なキャリアの目標を実現するための”手段”として捉えることも、転職成功において重要です。
明確なキャリアの棚卸しをする|企業選定や面接対策にもつながる
そして、1つ目と2つ目のステップの後に重要になってくるのが「キャリアの棚卸し」です。
キャリアの棚卸しとは、単に「自分にはこの業務経験がある」といった内容を並べるだけではありません。
まずは、経験やスキルを体系的に整理し、自身の強みを分析して明確化します。
そして、「理想のキャリアに向けてどのスキルや経験が不足しているか」を具体的に洗い出していきます。
例えば、自身の強みを整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 内容(例) |
|---|---|
| 経験 |
|
| スキル |
|
そして、このうえで、自身のキャリアの志向性や理想像を整理し、それに向けてどのスキルや経験が不足しているかを洗い出します。
不足しているスキルや経験が明確でない場合は、転職エージェントの活用も有効です。
この棚卸しにより、自分のアピールポイントを明確化できるほか、面接対策や企業選定にも役立ちます。
また上司や部下、同業の友人や同期といった「身近な第三者」に、ご自身についてヒアリングするのも、キャリアやスキルの棚卸しの有効な手段です。
一緒に業務に従事し、コミュニケーションを交わしている人たちの客観的な意見は、自分の立ち位置を知るための効果的な方法のひとつといえます。
「CPASSキャリア」
公認会計士の転職に適したタイミングとは
「転職のタイミング」は今後のキャリアを大きく左右するため、自分にとって最適な時期を見極めることが大切です。
繰り返しになりますが、自身の経験・スキルを基に将来目指すキャリアを逆算し、最良の選択をしていきましょう。
また、自身にとってベストなタイミングであることは重要ですが、転職先によって「転職しやすい」タイミングがあります。
例えば、大手上場企業への転職を考える場合、社内での昇進を見据えると30代前半までに動けるのが理想です。
ベンチャー・スタートアップ企業でCFOを目指すなら20〜30代前半の転職が多く、CFOとして直接応募する場合は30代後半〜40代前半が目安となります。
一方、FASへの転職は、40代でアドバイザリー業務未経験となると厳しいのが現実です。そのため、ポテンシャルが評価されやすい20代~30代前半がねらい目となります。
しかし、自身のキャリア形成における転職のタイミングと、転職先の「転職しやすい」タイミングを合わせて進めるのは、容易ではありません。
そうした自身の経験やスキルと企業、双方の事情を踏まえたうえで最適な形で転職活動を進めるために活用したいのが、業界特化型の転職エージェントです。
転職エージェントは、企業だけでなく業界の実情も踏まえ、求職者にとって最適なキャリア選択をサポートしてくれます。
一般的に”転職を勧める存在”という印象を持たれがちですが、「CPASSキャリア」のように、キャリア形成のパートナーとして設計段階から伴走してくれるエージェントを選ぶことで、不安を軽減できるでしょう。
公認会計士の転職を成功に向けて、業界特化型転職エージェントを活用する有用性とは
転職を成功させるには、自身のキャリアを「長期的な視点」から見つめ直すこと、そして入念に情報収集をすることが何より大切です。
とはいえ、これらを自力で進めるには、相応の経験と知識、工夫が求められます。
特に公認会計士の転職では、個別の転職先だけでなく、職種や業界全体への理解も欠かせません。しかし、その情報を個人で十分に調べるのは難しいのが現実です。
そこでおすすめなのが、会計ファイナンス業界特化型の転職エージェントの活用です。
会計ファイナンス人材特化型転職エージェントの「CPASSキャリア」では、会計ファイナンス業界転職に関する豊富な知識を持つ一流アドバイザーが徹底サポートいたします。
ただ求人を紹介するだけでなく、キャリアのパートナーとして伴走していきます。
転職はもちろん、ご自身のキャリア形成に不安がある方は、まずは”相談相手”として気軽に活用していただければと思います。
まとめ
公認会計士を含め、転職に失敗するパターンとして、「想定していた業務経験が積めなかった」「組織風土が合わなかった」「求人票と実態に乖離があった」などといった理由が挙げられます。
しかし、こうした失敗のほとんどは、事前のリサーチ不足や長期的なキャリア設計の甘さが原因となっています。
本記事で解説した、
- 幅広い情報収集のソースを活用する
- 長期的なキャリア設計を行う
- キャリアの棚卸しを徹底する
この3つのポイントを実践するだけでも、転職の失敗のリスクを軽減させることができます。
なかでも公認会計士の転職においては、会計ファイナンス業界に特化した転職支援を行う「CPASSキャリア」のような専門エージェントに相談することもおすすめです。
業界に精通した”プロ”の視点でキャリアを整理してもらうだけでも、転職のミスマッチを防ぐことにつながります。
理想のキャリアを実現するために、ぜひ今回紹介したポイントを意識しながら、転職活動を進めてみてください。
こちら


記事の監修者
松岡 宏紀
2007年、公認会計士試験に合格。EY新日本有限責任監査法人にて、監査・アドバイザリー業務に加え、社内外での研修講師や研修プログラムの作成・管理などに従事。現在、CPAエクセレントパートナーズ株式会社において、コンテンツの作成、監修を担当。