転職を考えてはいるものの、「年次決算の経験が浅く、今の自分では難しいかもしれない…」と感じている若手の経理人材も少なくありません。
たしかに年次決算業務の経験は、転職市場で高く評価されやすい経験のひとつです。しかし、ひとくちに「年次決算業務」と言っても、その業務内容は広く、評価されるポイントも多岐にわたります。
また、転職市場で評価される業務経験は、年次決算以外にも多くあります。
そこで本記事では、年次決算を含めた「転職で評価される実務経験」や「経験不足でも転職したい場合の対処法」について、解説していきます。
経理人材としてキャリアアップを図りたい方は、ぜひ参考にしてください。
経理転職で「年次決算」経験が高く評価される理由
年次決算業務の経験が重視される理由の一つが、「即戦力になると判断できるため」です。多くの企業で慢性的な人手不足が続いており、経理もその例外ではありません。
特に管理部門は少数精鋭であることが多く、企業は即戦力となる人材を求めています。
「経理人材として即戦力であるかどうか」を判断するうえで、重視される経験のひとつが「決算業務」です。
決算には月次・四半期・年次がありますが、なかでも年次決算は経理全体の流れを理解し、与えられた決算業務を期限内に完結できるスキルが求められます。
そのため、年次決算業務の経験があることは、「経理業務の全体像を理解し、決算プロセスに一通り対応できる人材である」ことを示す指標といえます。
実際、多くの企業が年次決算の経験を、即戦力人材かどうかを判断する材料として重視しており、応募条件に設定しているケースも少なくありません。
年次決算以外に、経理人材の転職で評価される実務経験
(CPASSキャリア編集部 作成)
一方、経理転職において評価されるのは、「年次決算業務経験」だけではありません。
ここでは年次決算業務以外に、経理の転職市場で評価される4つの実務経験を解説します。
連結決算や有価証券報告書・決算短信等の開示資料の作成
特に上場企業(および上場準備企業)の選考で特に評価されるのが、「連結決算や有価証券報告書・決算短信等開示資料の作成経験」です。
連結決算を行うには、会計基準への正確な理解に加え、子会社のビジネスを理解し、そのビジネスに関する一定の会計知識が欠かせません。
また、複数の子会社経理部門と連携しながら決算を進める場面が多いため、コミュニケーション力の高い人材が評価される傾向にあります。
特に海外に子会社がある場合には、語学力や現地の会計基準と日本の会計基準の違いを理解することも求められます。
さらに、グループ全体を取りまとめるうえでは、調整力やプロジェクト管理能力も重要な要素です。
加えて、上場企業では有価証券報告書・決算短信等の開示、J-SOX(内部統制報告制度)が義務付けられているため、これらの作成や対応経験も評価のポイントになります。
特に有価証券報告書での開示内容は決算情報以外にも、会社の経営戦略や役員の状況といった幅広い情報を記載します。
そのため、経理部だけでなく、経営企画部や人事部、総務部などの社内部署、そして監査を受ける監査法人の担当者と連携し、専門性の高い書類を作成する必要があります。
税務申告や税務調査への対応
税務申告は税理士に依頼することも多い、専門性の高い業務の一つです。
そのため、会計事務所等で税務申告の実務経験がある人材は“税務に深い知見を有している”と評価されます。
さらには税務申告業務では誤った申告を防ぐために厳密な進捗管理も求められることから、プロジェクト管理能力も評価ポイントになり得ます。
また、税務調査に適切に対応するためには、税理士や経営陣などの関係者との連携が重要です。
さらに、調査担当者とも円滑にコミュニケーションを取らなければならず、税務調査ならではの対応力が求められます。
税務業務における“即戦力”として考えられるため、特に人手不足になりがちな中小企業で評価される傾向にあります。
M&AやIPOに関する経験
上場企業や上場準備企業に評価されやすいのが、M&A(合併・買収)やIPO(新規上場)に関する業務経験です。
経理人材はM&Aにあたって、買収先企業や検討先企業の会計情報の精査、財務デューデリジェンスのサポートなどを行うことがあるため、会計などに関する高い専門性が求められます。
また、外部専門家と連携し、円滑にプロジェクトを進行する能力が求められます。IPOに関しても、
- 四半期決算体制の導入など開示体制の構築や運用
- 税務会計から金融商品取引法による会計基準の変更対応
- 内部統制システムの構築・評価
- 必要に応じた各種システム導入
- 監査法人や証券会社など外部機関への対応
など、そのフェーズに応じて多様で重要な役割を担います。
日本では近年おおよそ100社前後の企業が新規上場しており、IPOに向けた経理業務を担ったことがあるだけでも、その希少性が評価される傾向にあります。
管理会計経験
社内向けの会計手法である「管理会計」の経験も、経理の転職では評価されやすい要素のひとつです。
「管理会計」のスキルや経験は幅広く、わかりやすい例だと製造業における原価計算、予算と実績の差異分析が当てはまります。
こうした業務はコスト・収益構造の可視化につながり、結果として経営陣やマネジメント層の意思決定をサポートします。
業務は管理部門内で完結するものではなく、他部署・他部門との連携が不可欠であるため、転職では高く評価される傾向にあります。
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経理転職で求められる経験年数と年収相場
(CPASSキャリア編集部 作成)
ここでは、業務経験年数別に人材の市場評価や年収相場について解説します。
- 【業務経験3年以上】年次決算も経験し「経理経験者」として市場価値が高まり始める
- 【業務経験5〜10年未満】年次決算を主体的に経験し、即戦力人材として評価される
- 【業務経験10年以上】マネジメント経験もあるハイレベルな会計ファイナンス人材に
【業務経験3年以上】年次決算も経験し「経理経験者」として市場価値が高まり始める
経理職に3年以上従事していれば、日常的な会計処理に加えて月次・四半期・年次決算業務(業務サポート含む)など、経理のコア業務を一通り経験しているケースが多くなります。
また、後輩育成の経験などマネジメントに関連するスキルもあれば、さらに選択肢は広がります。
そのため、「業務経験3年以上」は、上司のサポートを受けつつも自力で一定の経理業務をこなせる「経理経験者」として市場価値が高まり始める時期だと言えます。
- 大手上場企業:500万円~
- 新興上場企業:450万円~
- スタートアップ企業:400万円~
- 中小企業:350万〜
上記の通り、業務経験3年以上の年収は350万〜500万円以上が相場です。
【業務経験5〜10年未満】年次決算を主体的に経験し、即戦力人材として評価される
業務経験5〜10年未満になると、後輩や部下のサポートをしつつ、現場で月次・四半期・年次決算業務をリードする経理人材も増えてきます。
また、企業によっては主任や課長などマネジメント職として、部下の育成に携わることもあります。
これらの経験を持つ人材は、どの企業でも「即戦力人材」として評価されるでしょう。
※マネージャークラスの場合
- 大手上場企業:600~1,000万円
- 新興上場企業:500~1,000万円
- スタートアップ企業:600~900万円
- 中小企業:450〜700万円
中小企業や大手上場企業の年収レンジが100万〜150万円であるのに対し、スタートアップや新興上場企業は300万円〜500万円と、振れ幅が大きいことが分かります。
後者はそれだけ個人の経験やスキルセット、転職後の成果が年収に反映されやすいと言えます。
【業務経験10年以上】マネジメント経験もあるハイレベルな会計ファイナンス人材に
業務経験10年以上のベテランには、年次決算業務を含む経理スキルはもちろん、マネジメント経験も求められます。
そのため、実務もマネジメントも高いレベルでこなせる人材が高く評価されるでしょう。
本人の能力や経験、実績、ポジションによって年収相場は大きく変わります。例えば、部長クラスの場合は下記の通りです。
※部長クラスの場合
- 大手上場企業:1,200〜2,500万円
- 新興上場企業:700~1,500万円
- スタートアップ企業:800~1,200万円
- 中小企業:500~800万円
上場企業での経理業務やIPO対応など、+αとなる経験・スキルを備えているとさらにキャリアアップしやすいでしょう。
また、こうした経験やスキルを持つことで、CFO候補など経営ポジションへの転職も目指せます。
経理の実務経験不足でもキャリアアップ転職したい場合の進め方
では、経理の実務経験がまだ浅い場合、どのようにキャリアアップ転職を実現すればよいのでしょうか。
ここでは3つの進め方を解説します。
実務で得た成果や身につけたスキルを整理する
まずは現状の「見える化」からスタートしましょう。具体的には、これまでの実務経験で得られた成果やスキルを、どんなに小さなことでも漏れなく書き出して、整理します。
成果やスキルの棚卸しをすることで、自身の強みや弱み、今後身につけたいスキルや経験などを可視化していきましょう。
こうした現状の整理は、転職活動を行う前に必ず行いたいキャリア設計や、面接対策につながります。
自分一人では不安な方は、転職エージェントの活用も有効です。
また、上司や同僚、部下、家族や友人など、自身をよく知る身近な人にヒアリングすることも、キャリアやスキルを棚卸しするうえで有効な方法です。
日頃一緒に業務やプライベートで時間を共にする人からの客観的な意見は、自分の強みや課題を知る手がかりになります。
経験不足部分は資格取得による「知識」で補い、アピールにつなげる
資格を取得することで自身の知識を客観的に示し、経験不足をカバーすることができます。
これから資格取得を検討するなら、まず日商簿記検定試験(2級以上)がおすすめです。
もしすでに日商簿記2級以上を取得している場合、以下の資格が転職での評価も高いため、今後の候補として視野に入れてみてください。
- 給与計算実務能力検定試験
- ビジネス会計検定
- FASS検定
棚卸しをした結果を踏まえて、自分に最適な資格を精査するのも一つの手です。
もちろん資格を取得したからといって転職が必ず有利になるわけではありませんが、アピールポイントの一つにはなります。
同時に、資格取得に向けて学ぶ過程で得た知識は、日々の実務にも活かせます。
目先の転職だけを目的にするのではなく、長期的なキャリア形成にもつながる視点を持って取り組むと、非常に効果的です。
転職後の経理実務にも直結するソフトスキルを磨いておく
キャリアアップ転職には、ソフトスキルを磨くこともポイントです。
ソフトスキルの研鑽は、転職後の実務の生産性向上に直結すると言えます。
また、ポテンシャルが評価されやすい実務経験1〜2年程度の経理人材にとっては特に、転職活動において有効なアピール要素になるでしょう。
若手の経理人材が磨いておきたいソフトスキルとしては、主に以下が挙げられます。
- ITスキル(PCスキルや基幹システムの操作など)
- コミュニケーションスキル
- 課題解決力
- プレゼンスキル(提案力)
実務での研鑽に加え、書籍や研修なども活用してスキルを身につけていきましょう。
なかでも「*CPAラーニング」のようなeラーニングの活用は、働きながら着実にスキルアップを目指す方におすすめです。
経理転職で悩んだら「特化型転職エージェント」の活用を検討してみませんか?
経理人材としての経験不足を不安に感じながらも、キャリアアップを目指したい方は“特化型転職エージェント”の活用を検討してみましょう。
会計ファイナンス業界に精通したキャリアアドバイザーから、より専門性の高いサポートを受けることができます。
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例えば、経験不足に悩む方には「このタイミングで転職するのがベストなのか、今の勤務先でどのような経験を積むと市場価値が上がりやすいのか」などについてもアドバイスしています。
「転職する」ことを目的にするのではなく、「理想のキャリアを実現するためにベストな選択は何か」を軸にサポートをすることが可能です。
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まとめ
「年次決算」の業務経験は、経理の転職市場で高く評価される要素の一つです。
その他、連結決算や開示資料の作成、管理会計などの実務経験も、転職時に評価されるポイントです。
一方で若手の経理人材の場合、これらの経験が浅いと感じる方も多いでしょう。
そんな方は、まず本記事の内容を実践してみてください。
そのうえで「理想のキャリアパスに向かって、どのような経験を積むべきか知りたい」「今の年齢や実務経験からキャリアパスの可能性を把握したい」という方は、ぜひ会計ファイナンス人材特化型転職エージェントの「CPASSキャリア」にご相談ください。


記事の監修者
松岡 宏紀
2007年、公認会計士試験に合格。EY新日本有限責任監査法人にて、監査・アドバイザリー業務に加え、社内外での研修講師や研修プログラムの作成・管理などに従事。現在、CPAエクセレントパートナーズ株式会社において、コンテンツの作成、監修を担当。