経理人材が転職を検討する際、多くの方が「今のスキルで転職できるだろうか」「どのようなスキルや経験が選考で評価されるだろうか」と悩むことでしょう。
実際、中途採用では、その年代相応のスキルや経験を得ているかが、重要な参考情報となります。
そこで、本記事では、経理の経験年数によって求められるスキルや実務経験の目安を整理するとともに、スキル不足の場合の対処法などを解説します。
経理職としてキャリアアップを目指す方は、ぜひ今後の転職活動の参考にしてください。
【経験年数別】経理の転職で求められるスキルと実務経験
経理人材が転職市場で求められるスキルと実務経験について、経験年数別に整理すると、以下のようにまとめることができます。
ただし、各年次で求められる能力やスキルは企業によって変動するため、あくまで参考としてください。
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| 経験年数 | 求められるスキル | 求められる実務経験 |
|---|---|---|
| 3年未満 |
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| 3〜5年 未満 |
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| 5〜10年 未満 |
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| 10年 以上 |
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なかでもITスキルは実務経験に加え、重視される傾向にあります。
WordやExcelなどの基本的なPCソフトの操作スキルは前提として、会計システムやERPシステムの操作スキルも必須条件とされる場合があります。
さらに、会計システムの導入や経理業務の自動化・効率化プロジェクトへの参画や担当経験は、高く評価される傾向にあります。
キャリアアップを目指す方は、ぜひ上記を参考にこれから習得すべきスキルや積んでいくべき実務経験について整理をしてみてはいかがでしょうか。
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「日商簿記」などの資格は転職において有効か?
日商簿記を含む資格が転職における絶対条件になることは、多くはありません。
しかし、多くの企業では経理未経験の求職者に「日商簿記2級以上もしくは同等の知識」など、一定の知識水準のある人物を求めることが多いため、同資格を取得しておくと有利に働く場合もあります。
その意味では、資格取得は転職において有効だといえるでしょう。
また、資格取得に向けて勉強をすることで実務に必要な知識を得ることができ、転職先のみならず現職の業務に活かせるはずです。
実際に腰を据えて資格取得スクールへ通学して学ぶことに抵抗がある方や、経済的負担を感じる方は、完全無料のオンライン学習サービス「CPAラーニング」の利用を検討してみましょう。
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ハードスキルだけでなく、ソフトスキルも重要
経理職はキャリアアップするほど、監査法人や金融機関、税理士、社内の非財務部門など多様なステークホルダーと折衝や対話を行う機会が増えていきます。
そのため、経理の転職市場ではハードスキルだけでなく、コミュニケーションスキルやリーダーシップなどのソフトスキルも重要視されます。
つまり、ソフトスキルの高さがキャリアアップの鍵を握るとも言えるでしょう。
経理人材の転職に有利なスキルや実務経験
(CPASSキャリア編集部 作成)
経理人材の転職に有利なスキルおよび実務経験を5つ紹介します。
年次決算業務への対応
幅広い経理業務の中でも、経理の基本である決算業務のスキルを重視している企業は少なくありません。
言い換えると、決算業務のスキルがあれば、経理の転職市場で十分に戦うことができます。
年次決算への対応について、主に以下のような業務内容が挙げられます。
- 仕訳・帳簿の整理
- 決算整理仕訳
- 財務諸表の作成
- 税務申告関連業務
- 社内外への報告(経営陣への報告資料作成や金融機関・投資家への提出書類の準備など)
こうした決算業務経験は、業務遂行のために日々のお金の流れを俯瞰的に把握することが求められるため、必然的に財務管理に関する知識やスキルが身につきます。
また、決算業務は一人で完結するものではなく、チーム全体で取り組む性質上、経験を重ねることで、経理チームのマネジメントも視野に入ってくるでしょう。
よって、決算業務の統括を実行できる人材は、マネジメント能力も含めて高く評価される傾向にあるのです。
連結決算や有価証券報告書・決算短信等の開示資料の作成
連結決算・有価証券報告書・決算短信等の開示資料の作成スキルおよび経験は、特に同作業が生じる上場企業(および上場準備企業)で評価されます。
これらは上場企業ならではの業務で、複雑な処理が必要になります。
加えて、それらの資料を作成する能力だけでなく、数字の背景にある事業環境を分かりやすく伝える表現力も評価ポイントです。
また、J-SOX(内部統制報告制度)も上場企業に義務付けられた仕組みで、この対応経験も上場企業への転職には有利に働く経験といえます。
税務申告や税務調査への対応
税務申告および税務調査に対応するスキルや経験があれば、会社法や税法などに関する基礎的理解があると判断されるため、転職では有利に働く可能性が高いです。
特に税務調査に対応した経験については、税法の解釈力や調査担当者との適切なコミュニケーション能力などのスキルの証明にもなります。
大手企業では、経理部のなかに税務チームが設けられており、役割が明確化されていることが多いのに対し、中小企業では、経理と税務をセットで担当する傾向にあります。
こうした税務関連業務は、少数精鋭による対応が求められる中小企業で特に高く評価される傾向にあり、即戦力として好条件で内定を獲得できる可能性があります。
チームマネジメント経験
高年収求人の応募資格には「マネジメント経験」が掲げられることが少なく、マネージャークラスの求人はもちろん、マネージャー候補の求人であっても求められることがあります。
具体的には、経理スタッフのキャリア開発支援や新システムの導入プロジェクトの推進など、チーム全体のパフォーマンス向上に資する取り組みの経験は高く評価されます。
M&AやIPOに関する経験
上場企業や上場準備企業では、M&A(合併・買収)やIPO(新規上場)に関する経験を持つ人材が即戦力として評価されます。
M&Aでの経験は、買収先企業の会計情報を精査する能力やデータ分析力、M&Aに関する法的理解などのアピール要素になり得ます。
また、IPO準備に向けた開示体制の整備や内部統制の構築・評価、必要に応じたシステム導入などの経験は、その希少性から他の求職者との差別化要素になるでしょう。
経理人材の転職に求められる経験年数
(CPASSキャリア編集部 作成)
経理人材の転職に求められる経験年数は、目指したいキャリアによって異なります。ここでは、経理転職に求められる経験年数についてそれぞれ解説します。
原則として【業務経験3年以上】あることが望ましい
原則、「業務経験3年以上」があれば、経理人材として転職市場で一定の評価を受けることができます。
なぜなら、経理経験を3年以上積んだ人材であれば「仕訳処理や決算業務などの基本的な経理の業務フローおよび知識を一通り理解し、遂行できる」と判断されることが多いためです。
また、後輩育成の経験などのマネジメントにつながる経験もあれば、さらに選択肢は広がります。
特にポテンシャルが注目されやすい20代や30代前半であっても、これまでの経験が評価されやすい同業界への転職であれば、希望の転職を実現できる可能性は十分にあります。
課長やマネージャークラスなら【業務経験5〜10年未満】
課長やマネージャークラスへの転職には、5〜10年程度の業務経験が求められます。
経理を5~6年間経験した者であれば「担当業務を一人でこなせる自立した人材」とみなされ、7~10年間経験した者であれば「管理業務も任せられる知識と経験がある人材」と評価される可能性があります。
よって、業務経験5〜10年が管理職として転職ができるかどうかの節目と言えるでしょう。
部長クラスなら【業務経験10年以上】
部長クラスへの転職には最低でも業務経験10年以上は必須です。実際に部長クラスの求人では、応募資格に「10年以上の実務経験」を明記しているケースも少なくありません。
しかし、これは逆に言えば、実務経験10年以上はあくまで部長クラスへの転職の前提だということです。
「上場企業での経理業務経験」や「IPO対応経験やスキル」など+αとなる経験やスキル、実績があることが転職成功の鍵を握ります。
重要なのはご自身のキャリア設計に合った経験やスキル、実績を積み上げられているかどうか、です。
また、こうした経験やスキル、実績があれば、部長クラスのみならず、CFO候補といった経営ポジションへの転職も視野に入ります。
未経験者や【業務経験1年未満】でも転職できる可能性あり
経理未経験者や経理経験1年未満の方であっても、経理職の門戸自体は開かれています。実際に未経験歓迎の経理職求人も一定数あります。
一方で、応募が集まりやすい経理職では、日商簿記を始めとする資格や会計の知識がなければ、他求職者との兼ね合いでお見送りになるケースも少なくありません。
そのため、希望の転職を実現するためには、簿記資格および会計ファイナンスに関する知識の習得が極めて重要である点は認識しておきましょう。
もちろん、勉強と並行して転職活動を行うのも有効です。今の自分のスキル・経験・知識とマッチする求人があるかもしれないためです。
求人を検索する際には、未経験歓迎求人を多数掲載している会計ファイナンス人材特化型求人サイト「CPAジョブズ」の利用もご検討ください。
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私たちは単なる転職先の紹介にとどまらず、5年後、10年後、さらに次の転職も見据えた上で、転職者のキャリア全体を考慮しベストな提案をすることを心がけています。
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スキル不足でも経理に転職したい場合の対処法
経理の転職市場ではスキルセットが重要視されます。では、現状でスキルが不足している場合はどうすればいいのでしょうか。ここでは3つの対処法を解説します。
スキル証明のために資格取得を目指す
資格を取得することで、一定のスキル(知識)があることを示すことができます。経理職で転職を目指す方におすすめの資格は以下の通りです。
- 日商簿記検定試験(2級以上)
- 給与計算実務能力検定試験
- ビジネス会計検定
- FASS検定
実際に日商簿記や会計の知識を評価する企業は多数存在します。資格を取得するだけで転職が有利に運ぶとまではいえませんが、アピールポイントの一つにはなり得ます。
また、資格取得に向けて知識を身につけることは実務にも活かせます。
目先の転職のためだけでなく、長期的なご自身のキャリア形成に役立てることも視野に入れて、取り組んでみるといいでしょう。
スキルアップにつながる業務に積極的に取り組む
転職活動と併行して、現職でスキルアップにつながる業務に取り組むことも有効です。
教本やビジネス書、自己啓発書を読みながら業務に取り組むのも良いですが、実際に映像でイメージを明確にしながら業務に取り組むと、スキル取得はより速くなります。
例えば、先述した「CPAラーニング」では会計ファイナンス資格講座だけでなく、経理や税務、IPOなどの各種実務といった経理・財務業務に直結する講座から、コミュニケーションスキルやロジカルシンキングなどの普遍的なビジネススキル講座まで完全無料で受講できます。
経理の実務に関連する経理以外のスキルを磨く
企業によっては、コミュニケーション力や課題解決力・提案力などのソフトスキルに加え、経理業務以外に、例えばデジタルスキルといった専門スキルがあるかどうかも重要視しています。
そのため、経理スキルと並行して、実務に関連するその他スキルの向上にも取り組みましょう。
特に意識したいのがITスキルの習得です。近年の経理業務にはシステムやツールの操作が不可欠です。
よって、ITツールの活用やシステム導入に関する知見を培うことで、自身が即戦力人材であるとアピールできます。
経理人材の転職は「業界特化型転職エージェント」の活用が成功への近道に
経理人材に求めるポイントは企業によってさまざまです。ハードスキルを重視する企業もあれば、ソフトスキルを重視する企業もあります。
仮に評価ポイントが似通っていたとしても、決して同じ合否になるとは限りません。
だからこそ、経理人材の転職では、企業が求めるポイントを的確に把握した上で、自身の強みや経験を適切にアピールすることが大切です。
しかし、求職者が企業の求める人物像や評価ポイントを把握することには限界があります。そこで検討したいのが、業界特化型転職エージェントの活用です。
業界特化型転職エージェントは、“会計ファイナンス業界のプロフェッショナル”として、求職者のキャリアや意向にマッチした求人紹介に加え、転職を含めたキャリア形成のサポートを提供しています。
費用は一切かからないため、まずは登録し、ご自身のキャリア設計について相談してみることから始めてもいいかもしれません(転職の予定がなくても大丈夫です)。
「CPASSキャリア」
まとめ
経理人材の転職で求められるスキルは、経理業務の経験年数によっても異なります。
例えば、経理経験3〜5年未満であれば決算業務スキルが、10年以上であればマネジメントスキルがそれぞれ評価される傾向があります。
一方、スキル不足に悩みつつも転職を目指す求職者も少なくありません。
そのような方には経理や会計に関する資格取得や、業界特化型転職エージェントのキャリアアドバイザーへの相談から始めてみることをおすすめします。
理想のキャリア構築に向けて、まずは一歩踏み出してみませんか?


記事の監修者
松岡 宏紀
2007年、公認会計士試験に合格。EY新日本有限責任監査法人にて、監査・アドバイザリー業務に加え、社内外での研修講師や研修プログラムの作成・管理などに従事。現在、CPAエクセレントパートナーズ株式会社において、コンテンツの作成、監修を担当。