ひと握りの受験者しか「合格」に辿り着けない、ハードルの高い会計士受験。悲願達成への道は一本ではなく、歩き方も人それぞれです。
今回インタビューにご対応いただいた稲葉正仁さんは、新卒で入社した会社を3カ月で退職。簿記との出会いを追い風に公認会計士を志し、アルバイトと勉強の両立を選択しました。
その後、再び就職して環境を変えながら、足掛け3年で短答式試験を突破するも、論文式試験で3度の挫折と勉強の中断を経験。
そして6年のブランクを経て再挑戦の意義を見出し、CPA会計学院の受講生に。念願の合格へ辿り着きました。
稲葉さんが紡いできた稀有なストーリーは、積み重ねる力が未来を開くことを教えてくれます。
稲葉正仁さんプロフィール
2011年、会計のアウトソーシングやコンサルティング、人材派遣を手がける株式会社サンライズ・アカウンティング・インターナショナルに入社。
幅広い業種のクライアント対応を経験しながら、公認会計士の試験勉強の経験を生かし社内講座の担当も務めた。
2016年マネージャーへ昇進。チーム全体のフォロー及び管理職として、スタッフの人材育成に注力。
1.高校中退、就職迷走、そして簿記との出会い
少し回り道して入学したものの、あまり講義には出ず、バイト中心の生活を送っていました。
4年生の12月、卒業間近にようやく一社だけ内定が出たんです。迷いもありましたが、「ここしかないなら、行くしかない」という心境で入社を決断。
その後、4月に内定先の企業に入社するのですが、3ヶ月で辞めてしまって……。
「どこでもいいや」のスタンスで就職するとこういうことになるのかと、入社早々に後ろ向きな気持ちを抱えてしまっていたんです。
2級は背伸びして受けたので、案の定、ボロボロだったのですが、3級は「これは受かったな」という手ごたえがあって。
我ながら無謀ですが、申し込んだ時点で「会社辞めるぞ」モードでした。
「合う」か「合わない」がはっきりしている世界が、自分に合っていると思いました。
ただ、当時の自分は、本当に先行きが不安だったんです。会社に残ることで何が得られるのか、分からなかった。
ただ、レジの業務でお客様と会話すること、同僚と会話することが良いリフレッシュになっていた部分もあります。
2.受験撤退から再度就職、短答突破までの道
それこそリーマン・ショックを機に受験者が爆増しているタイミングで、私が受けた回は合格率が6.5%(論文式試験)まで落ち込んでいました。
「もう1年やったとしても受からない」と確信してしまうほど、自分の実力と合格ラインの間に圧倒的な距離がありました。
ただ、もしかすると、そこで徹底的に打ちのめされたのが良かったのかもしれません。ギリギリ受からない状態が長く続くと、引き際の判断に迷うじゃないですか?
一方私は、大学は奨学金、予備校はローンでしたから、「もう一度ローンを組んで勉強に専念する」という選択肢は現実的ではなくて。
2011年5月に受験撤退を決め、8月に入社できたのは運が良かったと思います。
それを心配させないようなアピールをする必要があると思います。
「勉強したことを活かしませんか?」という言葉が刺さり応募しました。
短答式試験は半年ごとに必ず挑戦することを自分に課して、通算6回も受験したんですよ。
忙しいからこそ、限られた時間で集中力を研ぎ澄ませるしかない。それが功を奏した部分はありますね。
3.挫折・中断・6年越しの再挑戦で見えた挑戦の意義
私が苦手だったのは答練です。
「どうせボロカスに書かれるからやりたくない」という負のスパイラルにはまった時期もあります。
しかし2回目の論文式試験も受からず、そこでモチベーションが急降下。
結果は……言うまでもないですよね。
2023年に受かったらかっこいいと思っていたのですが、さすがに無理で。結局は2022年の12月から2024年の5月まで短答はまた4回も受けました。
再チャレンジ期は自習室に通わず、カフェや自宅での勉強が中心。
往復で30分から1時間ぐらいは通勤時間が減っていたかと思います。
それも長年の蓄積がベースにあったおかげ。
そういった現場のイメージを持っているだけで問題を解像度高く読み取ることができる。
そこからは年が明けると補修所に通ったり、考査を受けたり、補修所短縮のための実務要件の書類を準備したりと、意外とやることが多いなと思いました。
4.「両立」で得られる強さ。「今日の5分」が物語を動かす
でも、若いときは情報が少なく、イメージだけで突き進んでしまいがち。
働いてみたり、いろんな経験をしたうえで「やっぱりやりたい」と思うなら、そのモチベーションは最初にチャレンジしたときより強いはず。
私自身の話をすると、高校を辞めたときも、社会人で就職がなかなか決まらないときも、先は真っ暗に見えました。
積み重ねた努力は、どこかで必ず活きる瞬間が来る。
社会人になってから難関資格を目指す価値は、両立の過程にこそあると思っています。
でも、働きながらやるなら長期戦の覚悟を持つのが現実的ですし、模索しながらでも両方をやりきると「どちらも手を抜かなかった!」と胸を張って言えるし、その経験は後に自分を支えます。
その強さは一生モノの財産です。
私、人生で何度もこけてきてるんですけど、それでも、一応生きてます。ちょっと雑な結論ですが、人生は「何とかなる」。
人との縁が生まれたり、話が盛り上がるきっかけになったり、いろんな形で報われるはずです。
だからこそ、少し違った角度から話ができたり、エピソードネタがあったりと今日のインタビューにも役立てることができました。
自己満足かもしれないけど、私はそれをやりたかった。
今、先が見えない人も、今日の5分からでいいと思います。小さな前進が、必ず自分の物語を動かしてくれます。

