
公認会計士として培った専門知識や経験は、さまざまな業界や職種で活用できます。しかし転職に際しては「どんな選択肢があるのか」「自分に合ったキャリアは何か」と悩む方も多いでしょう。
そこで本記事では、新たな一歩を踏み出そうと考えている公認会計士に向けて、26の転職先を紹介します。
おすすめの転職先や転職で失敗しないための注意点も解説しているので、理想の転職をかなえるためのヒントとして活用してください。
公認会計士の26の転職先とキャリアの方向性

公認会計士に向いている転職先は次の通りです。各転職先の特徴をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
No. | 転職先・ポジション名 | 各転職先・ポジションの概要 |
1 | 事業会社(経理部門) | 主な業務は月次・四半期・年次決算の作成、仕訳・伝票処理、入出金の管理など。収益や減益などお金の動きに関わる分析で経営陣をサポートする。 |
2 | 事業会社(財務部門) | 企業の資金管理や資金計画立案、予算策定、予算実績管理、金融機関の対応、決算支援などが主な業務。資産面から企業の経営戦略を支える。 |
3 | 事業会社(税務部門) | 税務書類の作成、税務申告手続き、企業に対して税務面からの助言を行う。大手企業では海外子会社との税務対応やM&Aなどの税務処理を担うことも。 |
4 | 事業会社(内部監査部門) | 主な業務は業務監査、会計監査、システム監査、監査結果の報告書作成、改善提案、内部統制など。組織の信頼性を守り、健全な成長を支援する。 |
5 | 事業会社(管理会計部門) | 主な業務は経営判断に役立てるための会計数値に基づく提案。通常の経理業務とは異なり、戦略的な視点が必要。 |
6 | 事業会社(経営企画部門) | 中長期経営計画の策定や推進、新規事業・M&A・アライアンスなど戦略案件の推進などを行う。企業の成長戦略を支援する「頭脳」的役割を持つ。 |
7 | スタートアップのCFO (IPO準備中の企業) |
企業の資金調達や運用、財務戦略の策定・実行などを担う財務の最高責任者。キャッシュフローの管理や予測、IPO準備など、企業の経営戦略を財務面から策定し、発展に導く。 |
8 | スタートアップのCAO (IPO準備中の企業) |
企業の組織運営や人事戦略など、総務や経理などの管理部門を取りまとめるバックオフィスの最高責任者。リスク管理の統括やオペレーション最適化など、企業の発展に欠かせない組織開発を担う。 |
9 | 社外取締役 | 客観的な視点で経営上の意思決定や業務執行を支援する。経営の健全性を担保するため、上場企業には設置義務がある役職。社内業務に直接関わる権限はない。 |
10 | 大手監査法人(監査部門) | 監査法人の核となる部門。企業の財務諸表が会計基準に沿うものかを確認。企業の信頼性を守り、取引先や株主、投資家などに対して正確で信頼できる情報を提供する。 |
11 | 大手監査法人(アドバイザリー部門) | クライアント企業の経営課題に対してM&Aや組織再編、事業承継などの財務戦略立案、プロジェクトの推進など戦略的アドバイスを行う。 |
12 | 中小監査法人 | 1,000程度を上限とする規模の監査法人。大小さまざまな規模の企業の監査に関わる。大手と比較すると残業が少なめで、ワークライフバランスを実現しやすい。 |
13 | 税理士法人 | 企業の税務代行、税務・財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行などを担う。税理士登録をして対応できる業務の幅を広げれば、キャリアの選択肢も広がる。 |
14 | 会計事務所 | 企業の会計・税務に関する業務・手続きを代行するのが主な業務。税理士事務所と業務内容は類似するが、監査業務も行う場合もある。 |
15 | 投資銀行・M&Aアドバイザリー | 投資銀行の主な業務は企業の資金調達、M&Aの提案・実行。M&Aアドバイザリーは買収に際して企業価値算定や買収金額の交渉などを担う。 |
16 | ベンチャーキャピタル(VC)・ PEファンド |
それぞれの対象企業について、事業の将来性を見極めて株式投資、経営支援などを行う。 |
17 | FAS | 財務に関するアドバイザー業務を提供する。主にM&AやPMI、事業再生支援、経営戦略立案などを行う。 |
18 | M&A・企業再生 | M&Aを活用して企業再生を模索する。事業再建などにより事業存続のための改革を行うのではなく、破綻状態にある企業そのものの維持のための改革を行う。 |
19 | 税務コンサルタント | 一般的な税務業務だけでなく、税務面から企業の成長戦略を支援する。会計や財務、税務面の課題を見つけ、解決策を提案。経営企画の策定なども行う。 |
20 | 会計系コンサルティング会社 | 会計・財務の面から企業経営を支える。企業の会計方針や業務オペレーションを分析し、課題を見つけ改善策を提案する。 |
21 | 戦略系コンサルティング会社 | 経営戦略、事業戦略、中長期ビジョンの策定などが主な業務。企業発展の根幹に関わり、戦略的な支援を行う。スピード感が求められる。 |
22 | 外資系企業(事業会社) | 経理として転職するなら、グローバル会計基準に精通し、多通貨オペレーションに対応する必要がある。本社が海外のため、英語力も欠かせない。 |
23 | 会計系スタートアップ (SaaS・Fintech) |
将来性が高く、今後も市場規模が拡大すると予想される。経理面で底支えする職種のほか、CFO、CAOとして活躍できる可能性がある。 |
24 | パブリックセクター(公的機関) | 医療法人、学校法人などで、経理や会計業務を担う。一般企業とは会計目的が異なるため、新たなスキル習得につながる。 |
25 | 教育・研修(講師・教材開発) | 公認会計士スクールなどで講師として教壇に立ったり、試験合格のための教材開発を担ったりする。 |
26 | 独立開業 | 公認会計士として自分で事務所を立ち上げ、独立する。 |
上記の通り、公認会計士がこれまでの経験とスキルを活かせる転職先は、非常に多いといえます。
例えば、仕事にやりがいを求めているなら、FASやスタートアップのCFO、CAOなどが選択肢になります。
年収を上げたいなら、監査法人でアドバイザリー業務へのシフトやパートナーを目指したり、コンサルティング系に転職したりするのもひとつの方法でしょう。
ワークライフバランスを重視するなら、事業会社の経理部門や財務部門などへの転職が考えられます。
近年、監査の高度化や、会計ファイナンス人材のキャリアの多様化により、公認会計士の転職市場での需要は高まっています。
しかし、条件の良さだけに目を奪われていると、将来的なキャリア迷走の原因にもなり得ます。
そのため、転職によって何を叶えたいかを明確にし、中長期的にキャリアを考えながら転職先を選ぶことが重要です。

(CPASSキャリア編集部 作成)
例えば、現在はBig4系監査法人のシニアスタッフで、将来的にスタートアップのCFOとして活躍したいと考えたとします。
いくつかのキャリアプランを立てられますが、なかでもシニアスタッフからマネージャーへの昇格を目指し、マネージャーとしてより高度な業務をこなしつつ、チームマネジメントの経験を重ねながら、スタートアップ企業のCFO転身を目指すという道を選んだとします。
この場合、現時点では転職はせず、現職での昇進を目指してスキルアップに取り組むというステップが見えてきます。
このように転職は手段であり、目的ではありません。自分はどんなキャリアを目指すのか、まずは“ゴール”を定めることが大切です。
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未経験(初めての転職)におすすめの転職先10選

公認会計士が初めて転職する際におすすめの転職先を10種紹介します。
- 事業会社の経理・財務部門
- 事業会社の経営企画・管理部門
- 事業会社の内部監査・内部統制部門
- IPO準備企業のCFO候補、経理部門リーダー
- FAS(財務アドバイザリー)
- BIG4のアドバイザリー
- 会計事務所・税理士法人・税務コンサルタント
- 戦略・総合・会計系コンサルティングファーム
- ベンチャーキャピタル(VC)・PEファンド
- M&A・企業再生
※画像で結論をサクッと確認したい方はこちら↓
事業会社の経理・財務部門
経理・財務部門は、企業のお金の動きを分析し、経営層にアドバイスする重要な役割を担っています。
特に財務部門は資金調達や予算管理も行うため、企業運営に大きく影響を及ぼす職種といえるでしょう。
公認会計士としての知識や数字分析力を活かせるため、即戦力として活躍できます。決算期など残業が増えることもありますが、比較的ワークライフバランスを取りやすい職種です。
事業会社の経営企画・管理部門
経営企画・管理部門は、中長期的なビジョンの構築や新規事業の推進など、企業の成長戦略に携わるポジションです。
数字分析力を発揮できるため、公認会計士の転職先としておすすめです。
さまざまな部署のメンバーとディスカッションを重ねることも多く、コミュニケーションやプレゼンが得意な方は転職に有利です。
自分の提案が企業の将来を動かす可能性もある、やりがいのある仕事といえるでしょう。
事業会社の内部監査・内部統制部門
内部監査・内部統制部門は、社内監査を通して業務上の不正を防止したり、社内のルールや仕組みを整備したりして、企業の信頼性向上や業務効率化を支援する業務です。
監査経験を活かして経営層を支えたい方におすすめです。
IPO準備企業のCFO候補、経理部門リーダー
IPO準備企業とは、株式上場の準備段階にある企業のことです。CFO候補や経理部門のリーダーとして入社した場合、上場までのプロセスに深く関わることになります。
資金調達やストックオプションの発行計画、管理部門の内部体制の構築など、その業務は多岐にわたります。
通常業務と並行して行うため多忙を極める傾向がありますが、企業の成長に関わりたい方ならやりがいを持って臨めるでしょう。
FAS(財務アドバイザリー)
FASは、企業に対して財務のアドバイスや支援を行います。
特定の課題に対してアドバイスを行うコンサルティングとは異なり、企業全体に関わる課題や問題に対して支援を行うため、幅広い知識を必要とします。
マネージャー、シニアマネージャー、パートナーとキャリアパスも整っており、年収も高めに設定されていることが多い業種です。
BIG4のアドバイザリー
BIG4のアドバイザリーは、大手企業におけるグローバルビジネスの最先端で金融戦略を担うのが主な業務です。
例えば、企業が海外進出する際には、現地の税制や法律、市場動向などを分析し、最適な事業計画と進出戦略を策定します。
公認会計士としての知識を基本に、幅広い業務に関わり、経験を得られる仕事といえるでしょう。ハードワークになる傾向が見られますが、その分年収も高めです。
会計事務所・税理士法人・税務コンサルタント
会計事務所・税理士法人・税務コンサルタントは、いずれも企業や個人事業主の会計や税務に関する業務が主な仕事です。
公認会計士としてのスキルや知識を直接活かしやすい転職先といえます。
仕事にやりがいを持って取り組みたいなら大手事務所に、ワークライフバランスを重視するなら中堅・個人事務所などを選択すると、希望に近い働き方ができます。
戦略・総合・会計系コンサルティングファーム
コンサルティングファームは、対象の業務領域について、企業の業務改善や発展に必要な分析、改善策の提案、実行などを支援する仕事です。
ハードワークになる傾向ですが、やりがいは十分あり、年収も高めです。
ベンチャーキャピタル(VC)・PEファンド
ベンチャーキャピタル(VC)・PEファンドへの転職は、他の企業や事務所と比較して難易度が高いといわれています。
VC・PEファンドでは財務に関する分析スキルをはじめ、企業の将来性を精査する力が必要とされるためです。公認会計士として経営寄りの業務経験がある方は、転職時に有利でしょう。
M&A・企業再生
M&Aや企業再生に関わるコンサルタント業務は、会計や財務に関連する知識だけでなく、経営における課題や改善点、改善施策の提案ができる経営視点が必要です。
アドバイザリーやコンサルティング能力が求められますが、未経験からでも挑戦可能な求人は多くあります。
公認会計士の知識を活かしながら、企業運営を支援したいと考える方におすすめの転職先です。

(CPASSキャリア編集部 作成)
公認会計士が転職で失敗しないためのポイント

公認会計士が初めて転職をするなら、失敗を防ぐために以下のポイントを押さえておきましょう。
それぞれ詳しく解説します。
転職の目的を明確にする
転職活動を始める際は、まず転職の目的を明確にしておきましょう。
「転職によってかなえたいキャリアパスがある」
「ワークライフバランスを整えるため、働き方そのものを変えたい」
など、転職で何をしたいのかはっきりさせておくと、求人を選びやすくなり、ミスマッチの少ない転職を実現できます。
希望条件は優先順位をつける
「年収を今より上げたい」「残業は少なめがいい」「精力的に働きたいが、出張は減らしたい」など、転職先に求める条件があるなら、その優先順位をつけておきましょう。
希望をすべてかなえる求人を選ぼうとすると、選択肢が少なくなり、良い求人に出会う可能性も低くなるからです。
中長期的なキャリアの戦略を描く
目先の条件にとらわれた転職ではミスマッチが起きやすく、転職を繰り返すことになりかねません。
3年先、5年先、10年先にどのようなキャリアを歩んでいたいかを明確にイメージし、それを実現するためにどのような転職先を選ぶと良いのか、よく検討しましょう。
戦略のない転職は、単なる条件改善にしかつながりません。自分を成長させる転職を叶えるためにも、中長期的なキャリア戦略を描くことは重要です。
納得できる転職を実現するには特化型転職エージェントがベスト
公認会計士としてのスキルを活かし、納得できる転職をしたいなら、特化型転職エージェントを活用するのがおすすめです。
公認会計士の価値を理解しているキャリアアドバイザーが対応するため、転職のチャンスを逃しにくく、会計士としてのスキルを活かせる転職先を見つけやすくなります。
また、客観的な視点からアドバイスをもらえるため、リファラル採用のように知人を信頼しすぎてミスマッチに気づかず転職してしまうことも避けられます。
【無料】公認会計士資格を持つアドバイザーのキャリアカウンセリングを受ける >>
公認会計士の転職は「CPASSキャリア」にお任せください
公認会計士として理想を叶える転職を実現したいなら、会計ファイナンス人材特化型転職エージェントの「CPASSキャリア」にご相談ください。
公認会計士の価値を理解しているキャリアアドバイザーが、理想の転職を実現できるようサポートいたします。
記事の監修者
松岡 宏紀
2007年、公認会計士試験に合格。EY新日本有限責任監査法人にて、監査・アドバイザリー業務に加え、社内外での研修講師や研修プログラムの作成・管理などに従事。現在、CPAエクセレントパートナーズ株式会社において、コンテンツの作成、監修を担当。