
スタートアップ企業は、若手のうちから裁量を持って働ける環境であることが多く、大きく成長できる機会に恵まれています。
一方で、スタートアップ企業の経理職への転職を検討するにあたって、「仕事内容は大手企業と何が違うのか」「実際にキャリアアップできるのか」「と疑問を持つ皆様も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、スタートアップ企業の経理職に関する仕事内容、年収、キャリアパス、必要なスキルに加えて、転職を成功に導くポイントまで解説します。
目次
スタートアップ企業とは?
スタートアップ企業への転職を検討する際は、まず言葉の定義や特徴を正しく理解しておくことが重要です。
「スタートアップ企業」は、シリコンバレー発のグローバル基準の呼称であり、ビジネスモデルの革新性や社会課題の解決力を強みに、IPOやM&Aといった明確な出口戦略を前提とする企業を指します。
加えて、外部からの資金調達(VC投資など)を活用しながら、短期間で急速な成長と大きなリターンの創出を目指す点も特徴です。
スタートアップ企業の経理の魅力

こちらでは、スタートアップ企業の経理ならではの魅力を3つの観点から解説します。ご自身のキャリアゴールと照らし合わせながらご覧ください。
経営層との距離が近い
スタートアップ企業では組織規模が小さいことが多く、スタッフクラスの経理担当者が代表取締役やCFO(最高財務責任者)と日常的に直接やり取りする機会もあります。
特にマネージャークラスの場合は、月次決算の結果を経営会議で報告したり、資金調達向けの財務資料が投資家プレゼンに活用されたりと、自身の仕事が経営判断に直結する場面が多くあります。
経理スキルを磨きながら経営視点も身につけたいという志向性を持つ方にとって、大きな成長の機会となるでしょう。
裁量が大きい
業務プロセスや社内ルールが整備途上のスタートアップ企業の経理職では、経費精算フローの設計や会計システムの選定・導入など、経理担当者自らが仕組みをゼロから構築する場面があります。
課題を発見し解決まで主体的に動くことが求められる一方で、取り組みの成果が可視化されやすく、成長実感を得やすい環境です。「決められた業務の枠を超えたい」と感じている経理パーソンに向いています。
キャリアパスが広がる
決算から財務管理、IPO準備、内部統制構築まで幅広い実務を経験できるスタートアップ企業の経理は、専門家としての市場価値を高める土台となります。
また、経営陣との近い距離の中で培う俯瞰的な視野は、経営企画やCFOへのステップアップも現実的な選択肢にします。
経理の日常業務を「守り」とするならば、財務やファイナンスといった経営の意思決定に関わる「攻め」の業務も経験できる高度な環境なのです。このように、若手のうちから多様な経験を積めるスタートアップ企業の経理は、将来のキャリアの選択肢を広げやすい点も魅力といえます。
スタートアップ企業の経理の主な仕事内容

スタートアップ企業の経理担当者(以下、本章以降では経理担当者とする)が担う業務は、大手企業の経理担当者と比べて多岐にわたります。
少人数の組織であることが多いため、一人の担当者が幅広く対応するケースが一般的です。こちらでは、主な仕事内容を紹介します。
日次・月次・年次決算業務
スタートアップ企業の経理担当者における根幹業務の一つが、各種決算に関連する作業です。日次の伝票処理・仕訳から月次決算の締め処理、年次の財務諸表作成、申告書類の準備まで、決算業務全般を担います。
少人数体制のスタートアップ企業では、スタッフクラスでも年次決算のプロセス全体に関わる機会が多く、大手企業では分担される業務を幅広くこなすことで、体系的な決算スキルを早期に習得できます。
資金繰りや財務分析など財務管理関連の業務
スタートアップ企業では、資金状況が事業継続に直結します。資金繰り管理は、スタートアップ企業の経理担当者にとって重要度の高い業務のひとつです。
月次・週次でキャッシュフローを把握・報告し、資金不足リスクを早期に察知し共有することが求められます。
財務分析レポートの作成で経営陣の意思決定を支援するほか、資金調達フェーズでは投資家向け財務資料の作成やデューデリジェンス対応を求められることもあります。
予算作成サポートや予実管理
スタートアップ企業では、事業の成長を計画的に管理するため、経理担当者が予算策定のサポートや予実管理を担うケースが多くみられます。各部門と連携して予算を策定し、月次実績との差異分析・経営陣へのレポーティングを行います。
大手企業では経営企画部門が主導する予算策定や予実管理業務を、スタートアップ企業では経理担当者に能力があれば、スタッフクラスであっても中心となって業務を進める場合もあります。
各部門のビジネス状況を理解した上で財務数値に落とし込む能力が必要となるため、経理の枠を超えて事業全体を俯瞰する視点が養われます。
税務申告など税務対応
法人税・消費税・源泉所得税をはじめとする各種税務申告の準備・対応も、スタートアップ企業の経理部門が担う重要な業務領域の一つです。
税理士事務所や顧問税理士と連携し、日常的な取引における税務処理の適正性を確認することも求められる場合があります。
また、成長フェーズが進むにつれ、株式報酬(ストックオプション)の税務処理や、資金調達に伴う複雑な税務判断が求められるケースも増えていきます。こうした業務を通じて、税務知識と実務スキルの両方を高めることが可能です。
監査対応とIPO準備(上場を目指す場合)
上場準備フェーズのスタートアップ企業では、監査法人による準金商法監査への対応と、IPOに向けた体制整備の両方に経理担当者が関わります。具体的には、以下のような業務を担います。
- 監査法人からの資料依頼に応じた証憑・説明資料の準備
- 監査が円滑に進むための調整
- 主幹事証券と連携した内部統制の整備
- 財務諸表の組み替え
- 開示資料(有価証券届出書など)の作成
業務負荷は高いものの、これらの経験を通じて会計処理の正確性や財務報告の理解が深まり、対外折衝力も養われます。
IPOを目指す環境ならではの実務であり、転職市場でも評価されやすく、マネージャーや経理責任者へのキャリアアップにつながる点が特徴です。
システム導入や全社横断プロジェクト参画やリード
スタートアップ企業では会計システムを活用するだけでなく、そもそもシステム導入から対応する必要があります。こうしたシステム導入のプロジェクトでは要件整理からベンダー選定・運用設計まで関わります。
また、全社横断プロジェクトでリード役を担うこともあり、経理の専門知識に加えてIT活用、組織横断の推進力、調整力、マネジメントスキルといったビジネススキルを幅広く身につけられます。
スタートアップ企業の経理の年収目安

スタートアップ企業の経理担当者の年収は、職階・担当業務の範囲・企業の成長ステージによって幅があります。例えば、下表のようにまとめることができます。
| 職階 | 年齢(目安) | 年収(目安) |
|---|---|---|
| スタッフ~主任・リーダークラス | 22〜30歳程度 | 350万〜600万円程度 |
| マネージャークラス | 28〜35歳程度 | 600万〜900万円程度 |
| 部長クラス | 30〜40歳程度 | 800万〜1,200万円程度 |
ここで記載している年齢は、あくまで目安になります。先にも述べているように、スタートアップ企業では経験者や若手に関係なく多くの業務を任され、本人のマインドやスキル、成果によって評価され、職階や年収が定まっていきます。
大手上場企業のスタッフクラスの経理担当者(400万〜700万円程度)や中小企業の経理スタッフクラスの経理担当者(300万〜400万円程度)と比べると、スタートアップは業績や評価制度による変動幅が大きく、成果に応じた報酬が得られやすいという特徴があります。
また、ストックオプション制度を採用している企業では、IPO時にさらなる経済的リターンが得られる可能性もあります。
スタートアップ企業の経理職は、担当業務の幅広さや成長環境が魅力的ですが、企業の規模や資金状況によっては、大手企業ほどの水準に至らないケースもあります。
転職活動で想定年収をチェックする際には、基本給だけでなく、賞与制度・各種手当・ストックオプションなどの報酬体系を総合的に確認しておくとよいでしょう。
スタートアップ企業の経理のキャリアパス例

(CPASSキャリア編集部 作成)
スタートアップ企業の経理職からは、専門性を深める道からCFOや経営幹部への道まで、多様なキャリアパスを描くことができます。こちらでは、スタッフ・マネージャー・部長クラス別に代表的な例を紹介します。
- 【例】スタッフクラスからのキャリアパス|部門内の昇進や他事業会社への転職など幅広く活躍できる
- 【例】マネージャークラスからのキャリアパス|経営幹部やコンサルへの転身などさらなる高みを目指す
- 【例】部長クラスからのキャリアパス|会計ファイナンスのトップ人材として経営中枢への道が開ける
【例】スタッフクラスからのキャリアパス|部門内の昇進や他事業会社への転職など幅広く活躍できる
スタートアップ企業の経理職に至るまでのバックグラウンドは多岐にわたります。主なキャリアとして、
- 大手上場企業の経理スタッフ
- 中小企業の経理スタッフ
- Big4系監査法人のスタッフ
- 会計事務所スタッフ
という大きく4つのパターンが代表的です。一方で、「経理」という枠にとらわれないキャリアも見られます。例えば、他部門からの社内異動や、他業種から未経験で経理職へ転職するケースです。
未経験の場合は、総務・人事などのバックオフィス部門に加え、営業やマーケティングなど、数値管理に関わるフロント部門からの転職も一定数あります。場合によっては、社会人未経験からチャレンジできるケースもあります。
こうした多様なバックグラウンドからスタートアップ企業の経理として転職した後のキャリアパスとして大きく下記の3パターンが考えられます。
- 経理部スタッフ→経理部マネージャー→経理部長
- 経理部スタッフ→経理部マネージャー→他事業会社 経理部マネージャー
- 経理部スタッフ→経理部マネージャー→他事業会社 経営企画部マネージャー
スタートアップ企業の経理スタッフは大手企業のスタッフと比べても、幅広い業務経験を早期に積めるため、短期間でマネージャーへのステップアップが期待できます。
経理部スタッフ→経理部マネージャー→経理部長
スタートアップ企業では、日次・月次・年次決算に加え、財務管理や税務対応など幅広い業務を担います。
また、他職種出身であっても、全社横断の業務改善プロジェクトへの参画や、各部門との連携による業務フローの整備など、自身の強みを業務に掛け合わせることで評価につなげることが可能です。
こうした幅広い業務を担当し、実績を積み上げていくことで、チームの中核メンバーとして経理マネージャーへのステップアップが見えてきます。
マネージャーとして経理チームの統括や経営陣への財務報告などより高度な業務を担当した後、さらなるIPO対応や内部統制構築などの実績を重ねることで、経理部長への昇進というキャリアパスを描くことができます。
経理部スタッフ→経理部マネージャー→他事業会社 経理部マネージャー
スタートアップ企業では、日々の現場実務から会計ソフトの導入、法改正対応にいたるまで、幅広い業務を担います。前例やマニュアルがない中で、経理という機能と組織を「ゼロから作って回す」という特有の経験を積むことができます。
こうした環境では、単なる定型業務にとどまらず、会社の成長スピードに合わせて業務フローを自らアップデートしていくことが求められます。
そうして組織の土台を支えた実績は、チームの中核メンバーや経理マネージャーへとステップアップするうえで、高く評価されます。
例えば、マネージャーとして少人数のチームを率い、属人化しがちな現場業務の標準化や、経営スピードに耐えうる月次決算の早期化などを主導します。
その後、そうした「圧倒的な当事者意識と仕組み化のスキル」を活かして、他の中堅・大手企業や別業界の急成長企業の経理マネージャーへと転職するルートが考えられます。
経理部スタッフ→経理部マネージャー→他事業会社 経営企画部マネージャー
スタートアップ企業の経理で得た財務管理・予実管理・経営陣との協働経験は、経営企画職への転身においても評価されます。
経理スタッフから経理マネージャーへとステップアップした後、その経験を活かして大手上場企業や新興上場企業の経営企画部門へ転職するルートも存在します。
財務分析・予算管理・事業評価といったスキルを活かし、経理の枠を超えた経営サポート職として活躍の場を広げることが可能です。
【例】マネージャークラスからのキャリアパス|経営幹部やコンサルへの転身などさらなる高みを目指す

スタッフクラスと同様にマネージャーポジションについても、多様なバックグラウンドがあります。
- 同企業内の経理主任(チームリーダー)
- 同企業内の財務担当者
- 大手企業の経理スタッフクラス
- Big4系監査法人のシニアスタッフ
- 非Big4系監査法人のマネージャー
- コンサルティングファームのコンサルタント
いずれの場合も、経理・財務に関する専門知識や実務経験に加え、会計ソフトなどのシステム活用スキルや、社内外との円滑なコミュニケーション力など、これまでに培ってきた経験やスキルが評価されます。
下記の2パターンのように、スタートアップ企業の経理では、マネージャーからのキャリアパスはCFOへの昇進や、コンサルティング領域への転身など、より高いポジションへのステップアップが視野に入ります。
- 経理マネージャー→経理部長→CFO
- 経理マネージャー→他事業会社 経営企画部マネージャー→コンサルタント
経理マネージャー→経理部長→CFO
スタートアップ企業で経理マネージャーとして資金調達対応・内部統制整備・IPO準備などを経験した後、経理部長として組織全体の財務管理を統括するポジションを経て、最終的にCFOとして経営に参画するキャリアパスがあります。
CFOは財務戦略の立案・投資家対応・経営判断のサポートなど経営の根幹を担うポジションであり、スタートアップ企業での一連の経験がその素地を形成します。
経理マネージャー→他事業会社 経営企画部マネージャー→コンサルタント
スタートアップ企業での経理マネージャー経験を経て、他の事業会社の経営企画部門へ転職し、そこで事業評価・M&A・経営改善などの業務を経験した後、会計・財務コンサルティングファームへのキャリアチェンジというルートも考えられます。
専門性とビジネス全体への理解を組み合わせた人材として、コンサルティング業界でも高い評価を受ける可能性があります。
【例】部長クラスからのキャリアパス|会計ファイナンスのトップ人材として経営中枢への道が開ける
スタートアップ企業の経理部長ポジションへのキャリアパスも多様です。直前のポジションとしては以下の4つのパターンが考えられます。
- スタートアップ企業の経理部・財務マネージャー
- 監査法人のマネージャー
- 大手企業の経理部マネージャー
- コンサルティングファームのシニアマネージャー
どのポジションも高度で、経理・財務に関する専門知識や経験は当然ながら、マネジメント経験や資金調達やM&A関連業務、IPO経験など経営者視点での思考や業務遂行スキルが評価されます。
スタートアップ企業での経理部長としての経験は、将来的にはCFOやCAOなど、より経営に近いポジションへステップアップする選択肢を広げることにつながります。
「スタートアップ」という環境で磨いた経営視点・実行力・ファイナンス知識は、多くの組織で高く評価されています。例えば、下記の2パターンのようなキャリアパスが考えられます。
- 経理部長→CFO→他事業会社のCFO
- 経理部長→外資系企業 FP&A→CFOやコンサルタント
経理部長→CFO→他事業会社のCFO
スタートアップ企業で経理部長としての実績を積んだ後、同社のCFOに就任し、財務戦略全般を統括するポジションへとステップアップするルートです。
その後、さらなるキャリアの選択肢として他の成長企業やIPO準備企業のCFOとして迎えられるケースもあります。
特にスタートアップ経理出身者は、成長フェーズの企業が必要とする組織構築・資金調達・IPO準備の経験を持つ人材として、転職市場においても有利になりやすい傾向にあります。
経理部長→外資系企業 FP&A→CFOやコンサルタント
スタートアップ企業で経理部長として財務の全般を担った後、外資系企業のFP&A(財務計画・分析)部門へ転身し、グローバル基準での財務分析・予算管理・経営戦略サポートを経験するルートです。
その後は、外資系企業のCFOや会計ファイナンス領域の専門コンサルティング職として活躍する選択肢もあります。
スタートアップ企業の経理転職で評価されるスキルや経験

(CPASSキャリア編集部 作成)
転職を成功させるためには、採用企業が求めるスキルや経験を把握することが重要です。こちらでは、特に評価されやすいスキル・経験を8つ解説します。
- 会計・決算業務に関する実務スキル
- 税務に関する知識・実務対応力
- ITツール・クラウドシステムの導入経験や活用スキル
- 資料作成・データ分析スキル
- コミュニケーション力・関係者調整力
- 主体性(自走力)・推進力
- チームマネジメント・リーダーシップ
- M&AやIPOに関する経験
会計・決算業務に関する実務スキル
会計・決算業務に関する実務スキルは経理業務の根幹であり、最も重視されます。伝票処理・仕訳作業から月次締め、財務諸表の作成まで、一通りの実務経験があると即戦力として評価されやすくなります。
少人数体制で決算業務を担当していた経験は業務の全体像を理解している証明となり、一部しか担当していない場合でも補助業務や資料作成の経験が評価対象になることがあります。
税務に関する知識・実務対応力
先に述べた通り、スタートアップ企業では、経理担当者が税理士事務所と連携しながら申告書類の作成補助や資料準備を担うケースが多く、税務に関する基本知識と実務経験が求められます。
こうした背景から、法人税・消費税の申告実務や税務調査への対応経験は転職活動で強みになります。
企業によっては、ストックオプションの税務処理など、スタートアップ特有の税務対応の経験も評価につながります。また、税理士試験の科目合格などの学習実績もアピール材料になります。
ITツール・クラウドシステムの導入経験や活用スキル
スタートアップ企業では、業務効率化のためにクラウド会計ソフトや経費精算システムを活用しているケースが多くあります。こうしたツールへの習熟度や、システムの導入・運用をリードした経験はアピールポイントになります。
また、特定のツールを用いた業務効率化の経験も評価対象となります。IT導入のプロジェクトへの参画経験がある場合は、具体的な取り組みと成果を整理した上で転職活動に活かすことをおすすめします。
資料作成・データ分析スキル
スタートアップ企業の経理職は、財務データをもとに迅速に判断を行うことが求められます。収益構造やキャッシュフローなどの財務データを分析・可視化するスキル、経営資料の作成経験などが評価対象となります。
また、Excelなどの表計算ソフトに加えてBIツール(TableauやPower BIなど)や会計システムのデータ出力機能を活用した経験があると、即戦力として歓迎される傾向にあります。
コミュニケーション力・関係者調整力
「経理は数字やデータと向き合う業務」というイメージが先行しがちですが、特にスタートアップ企業では経営判断に近い業務も担うため、情報を的確に伝えるコミュニケーション能力が求められます。
経営陣、他部門、監査法人、投資家など社内外の多様なステークホルダーと日常的にやり取りするため、財務数値をわかりやすく説明する力や、関係者の意図を業務に反映する力が欠かせません。
経営陣に限らず、社外機関との折衝経験がある方は、積極的にアピールするとよいでしょう。
主体性(自走力)・推進力
スタートアップ企業では、職種やポジションに関わらず、自ら課題を発見し、現場や経営層に働きかけながら解決に導く主体性と推進力が重要です。
与えられた業務をただこなすだけでなく、業務改善や新たな仕組みづくりに主体的に取り組んだ経験は、転職市場においても高く評価される傾向があります。
例えば、経理体制の整備や業務フローの構築など、未整備な領域において体制構築から運用までを主導した経験は、再現性のあるスキルとして評価されやすいポイントです。
こうした取り組みを進めるには周囲の協力が不可欠であり、関係者を巻き込みながら推進してきた経験として、評価されます。
チームマネジメント・リーダーシップ
スタートアップ企業では、経理チームの立ち上げやメンバーの育成、業務プロセスの改善をリードする機会が多くあります。これに関連する経験があれば、将来的なマネージャーポジションへの登用を見据えた採用においても評価されます。
チームを動かした経験が少ない場合でも、後輩指導や業務マニュアルの整備、業務フローの可視化といった実績があれば、マネジメントの素養を示す材料として活用できます。
M&AやIPOに関する経験
M&A(合併・買収)のデューデリジェンスへの対応や、IPO準備に関する実務経験は、通常の経理業務とは異なる専門的な対応が求められるため、特に評価されやすい希少なスキルセットです。
直接的な経験がない場合でも、M&Aや資金調達に間接的に関与した経験(資料作成の補助、社内調整の担当など)や自己学習の姿勢も、幅広い対応能力のアピール材料となります。
スタートアップ企業の経理転職でよくある質問

スタートアップ企業の経理転職を検討している方から、特に多く寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。
- スタートアップ企業の経理は業務幅が広く残業も多くなりがちで、きついと聞きますが実際はどうですか?
- スタートアップ企業の経理に向いているのはどんな人ですか?
- スタートアップ企業の経理転職に有利になる資格はありますか?
スタートアップ企業の経理は業務幅が広く残業も多くなりがちで、きついと聞きますが実際はどうですか?
スタートアップ企業の経理は基本的に少人数体制のため、決算時期・税務申告期間・IPO準備フェーズなど繁忙期には業務が集中しやすく、時間的な余裕が限られる場面もあります。ただし、これは業務の幅広さや成長環境という魅力の裏返しでもあります。
どの業態・規模の企業でも繁閑はあり、スタートアップ企業も例外ではありませんが、企業の成長ステージや組織の整備状況によって働き方は大きく異なります。
経理体制が整ってきたフェーズの企業では分業が進み、個人の負担が改善されているケースも多くあります。転職を検討する際は、経理の体制やチーム規模、働き方についてしっかり確認することが重要です。
スタートアップ企業の経理に向いているのはどんな人ですか?
変化を前向きに受け入れ、自ら課題を発見して解決に動ける方は、スタートアップ企業に向いています。組織や業務プロセスが急速に変化する環境でも柔軟に対応できる姿勢が求められます。
また、経理の専門業務を担いながら経営全体への関心が高く、財務データをもとに事業貢献を意識できる方にとって、スタートアップ企業は活躍しやすい環境です。
反対に、確立されたルーティン業務を安定的にこなすことを重視する場合は、大手企業の方がマッチするケースもあります。
スタートアップ企業の経理転職に有利になる資格はありますか?
スタートアップ企業への転職で資格が採用の絶対条件になることは多くありませんが、業務知識の証明となる資格は存在します。例えば、次のような資格が有効です。
- 日商簿記2級:財務会計の基礎知識を示すものとして広く認知されており、転職活動の基礎力の裏付けとなります
- 公認会計士資格:監査、内部統制、財務報告に関する高度な専門知識を有する人材として、特にIPO準備段階のスタートアップ企業から需要が高い傾向にあります
実務スキルは資格がなくても実績で示せますが、資格よりも実務経験の内容と深さが評価の中心となるため、現職での業務の幅を広げることも並行して検討されることをおすすめします。
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まとめ
スタートアップ企業の経理職は、経営層との距離の近さ、業務の幅広さといった特徴を持ち、若手人材が成長できる環境として注目されています。社内での昇進ルートに加え、他事業会社の経営企画職やコンサル職への転身など、多彩なキャリアパスを描けることも魅力です。
なお、転職活動ではスタートアップ企業で評価されるスキルを理解した上で、自身の強みを効果的にアピールすることが重要です。
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記事の監修者
泉 辰弥
公認会計士。EY新日本有限責任監査法人にて、海運業界の現場を知る強みを活かしてメインで海運会社の監査を担当。その後参画したESネクスト有限責任監査法人では、インチャージとして複数社のIPO監査をリードし、企業の株式上場を現場の最前線で支えた。
現在はCPAキャリアサポート株式会社において、現場で培った泥臭さ、8年間の粘り強い経験、そして監査・IPO現場での実績を還元すべく、会計人材のキャリアに寄り添うキャリアアドバイザーとして奮闘中。