
専門学校から大手監査法人へ。公認会計士・長谷川さんのキャリアの裏側には、大学受験の挫折を自らの決断で塗り替えてきた軌跡があります。監査法人で念願のIPO支援に携わるなか、彼が抱いたのは同じような業務を繰り返すことへの危機感でした。
29歳、住宅ローンや妻の妊娠という重責を背負いながら、長谷川さんは未経験の分野である事業再生に挑戦することを選択しました。CPASSキャリアの菅井が伴走することで、Big4 FASでのシニアアソシエイト採用と年収アップを同時に勝ち取った転職の舞台裏に迫ります。
長谷川(仮)さんプロフィール
専門学校を経て公認会計士試験に合格し、2020年にBig4監査法人に入社。製造業等の監査やIPO支援業務に従事した後、事業再生領域への転身を決意。29歳でBig4 FAS へ転職し、未経験ながらシニアアソシエイトとしての採用を勝ち取った。

担当キャリアアドバイザー
菅井剛。CPASSキャリア キャリアアドバイザー。公認会計士。監査法人で上場企業の財務諸表監査やIPO支援業務に従事。2023年、CPAキャリアサポート株式会社入社。
目次
公認会計士という「武器」で掴んだキャリア。専門学校から大手監査法人への挑戦
── まずは長谷川さんが公認会計士を目指された原点からお聞かせください。
長谷川さん 正直に申し上げますと、一番の動機は大学受験の失敗を挽回したいという思いでした。高校卒業時、第一志望の大学に受からず、納得のいく結果が出せなかったんです。両親からは「浪人はさせない」と言い渡されていましたが、納得感のない状態で自分の進路を決めてしまうことに危機感がありました。学歴に左右されず、自分の実力だけで勝負できる圧倒的な「武器」がほしい。そう考えて探し出したのが公認会計士でした。
公認会計士に惹かれたのは、キャリアの選択肢が広い点です。監査法人という入り口を経て、アドバイザリーや税務、企業のCFO、さらには独立開業まで、自分の努力次第でどこへでも行ける。「この資格さえあれば、どんな大学を卒業するよりも確実に自分の力で未来を切り拓いていける」と確信し、滑り止めで合格していた大学ではなく専門学校への入学を決めました。
── その専門学校でも、自ら環境を変える決断をされたそうですね。
長谷川さん はい。最初に入学したIT・会計系の専門学校は、生徒同士で教え合う「ゼミ学習」というスタイルを主としていました。ただ、これが自分には合いませんでした。初学者同士で議論しても結局正解が分からず、講師に質問しても全科目を一人で担当されていたため、踏み込んだ回答が得られないこともあったんです。 合格という目的に対して、今の環境が最短ルートではないと感じていました。
そんな折、大手予備校に移った友人が効率良く学習している姿に影響を受け、私も思い切って転校することを決断しました。転校後は、ただ闇雲に勉強するのではなく、試験傾向から逆算して自分の弱点を徹底的に潰していく戦略的な学習スタイルへと切り替え、23歳でついに合格することができました。
IPO準備が頓挫する現実。初期フェーズの繰り返しに抱いた「監査の限界」
── 合格後、Big4監査法人へ入社されました。1年目からIPO支援業務を志望されていたとのことですが、まずはその理由から教えてください。
長谷川さん すでに内部統制の基盤が確立されている大手上場企業の監査も社会的意義の大きな仕事ですが 、私はそれ以上に、会社が急激に成長していく過程を間近で見たいという思いがありました。ガバナンスや内部統制の土台を、これから築いていくフェーズの企業が、 上場という高いハードルを越えるために組織をアップデートしていく。そのプロセスに専門家として貢献したいと考え、IPO支援を志望しました。
── 実際の実務では、どのような手応えを感じていましたか?
長谷川さん 1年目から製造業やIT企業など、さまざまな上場準備会社の監査に関わらせていただきました。大手企業の監査とは異なり、IPO準備中の企業は、連結財務諸表の作成体制すらこれからの状態であることも珍しくありません。だからこそ、監査人としてクリアすべき課題をロジカルに指摘し、それによって会社の制度が目の前で整っていくプロセスには、この仕事ならではの大きなやりがいを感じていました。
自分たちが議論して引いた線が、そのまま会社の正式なルールとなり、組織の骨組みになっていく。単なる点検に留まらず、会社が形作られる瞬間に伴走できているという実感は、当時の私にとって大きなモチベーションになっていました。
── 監査法人で約4年、シニアスタッフとして主査も任される中で、なぜ監査ではなく事業再生という領域に興味が移ったのでしょうか。
長谷川さん 主査として現場を動かす立場になり、実務の解像度が上がるにつれて、ある構造的な課題に直面したからです。私が所属していた部署には将来を期待されたIPO案件が数多くありましたが、実際には、そのすべてが上場というゴールに辿り着けるわけではありません。
業績が計画を下回り資金繰りが悪化する、社内体制の不備で準備が頓挫する……。そうした事態が起きると、最終的にクライアント側がIPOの延期や断念を選ばざるを得なくなるケースもあり、監査人としての立場に限界を感じることもありました。
── 志半ばで準備が止まってしまう会社を、数多く見てこられたのですね。
長谷川さん はい。クライアントがIPOの断念や延期を選択した後は 、私はまた別の新しい会社の「N-2期(直前々期)」の監査を担当することになります。IPO準備の初期フェーズは、企業ごとに抱える課題が全く異なるため、業務自体は毎回が真剣勝負で、非常にエキサイティングです。ただ、監査人という独立した立場である以上、私の役割はどこまでいっても、外側からの課題指摘と助言に限定されます。
その頃から「このままでいいのか?」と自問自答することが増えました。 監査という外側からのチェックではなく、業績が悪化した局面でこそ一歩踏み込み、企業の存続や再建を直接支援する事業再生の世界に飛び込みたいと思うようになったんです。

30歳で挑む未経験領域への転職。公認会計士がFASを選んだ戦略的決断
── 転職活動を開始されたのが29歳。非常に大きなライフイベントが重なっていた時期だったそうですね。
長谷川さん はい。第一に妻の妊娠が分かり、これから父親になるという責任がありました。第二に、念願のマイホームを購入して住宅ローンの返済が始まったばかりというタイミング。一般的に見れば、この状況で未経験の領域、しかもハードな環境として知られるFASへ飛び込むのは「やめておけ」と言われると思います。
実際、周囲からも「新しい挑戦をするのは、子供が生まれて落ち着いてから考えればいいのではないか」とアドバイスされました。
── それでも立ち止まらずに、あえて挑戦することを選んだのはなぜですか?
長谷川さん 新しいフィールドへ挑戦するなら20代のうちに、という思いがあったからです。30代、40代になってから未経験の分野に飛び込むのは、体力面やスキルの吸収スピードを考えても、やはりリスクが上がります。万が一、新しい環境でうまくいかなかったとしても、20代であれば公認会計士としてのキャリアを立て直せるはずだ。そう自分を納得させました。
── ご家族の存在は、ブレーキではなくアクセルになったのですね。
長谷川さん そうですね。家族を守る責任があるからこそ、納得感のないまま中途半端な状態で働きたくありませんでした。将来、子供に対して「お父さんは、やりたいことに挑戦してきた」と後ろめたさなく言える自分でありたかったんです。それなら迷っている間にチャンスを逃すのが一番のリスクだと考え、覚悟を決めて転職活動を開始しました。
── 数ある転職エージェントの中から、CPASSキャリアを選ばれた理由を教えてください。
長谷川さん 監査法人時代の同僚たちの間で、「会計士のキャリアを深く理解していて、無理に求人を押し付けてこない」と非常に信頼されていたからです。実際、私を担当してくださった菅井さんとお話しして驚いたのは、これまで経験してきた実務をお話ししただけで、IPO監査で感じていた違和感を丁寧に汲み取ってくれたことです。
他社では「IPOの経験があるなら、大手企業の経理ですぐに内定が出ますよ」といった、表面的なスペックに基づいた提案が中心でした。もちろんそれも一つの選択肢ですが、私が求めていたのは単なる転職先ではなく、挑戦できる環境でした。その点、CPASSキャリアは「Kさんが本当にやりたいのは、数字のチェックではなく、ビジネスモデルを組み替える事業再生ですよね」と、私の思いを的確に整理してくれました。
的中したFASケース面接対策。未経験からシニアアソシエイト採用を勝ち取る
── 未経験の事業再生領域において、シニアアソシエイトという役職での採用、さらに年収アップという結果を得られたのは大きな成果ですね。勝因はどこにあったとお考えですか。
長谷川さん 菅井さんと共に行った、徹底した対策に尽きると思います。FASの選考、特に今回内定をいただいたBig4 FAS のようなトップファームでは、ケース面接が最大の山場です。私のような実務未経験者がポテンシャルを証明するためには、いかに現場の思考プロセスを自分の中にインストールできるかが課題でした。
── 具体的にどのような対策をされたのでしょうか。
長谷川さん 菅井さんからは、過去の選考データを踏まえた具体的な面接対策に加え、一番の不安要素だったケース面接の過去の出題内容を共有していただきました。 事前にそのテーマに沿って徹底的にシミュレーションを重ねて臨んだのですが、驚いたことに、本番でまさに準備していた通りの問題が提示されたんです。 対策がドンピシャではまったおかげで、焦ることなく論理的な思考プロセスを面接官に示すことができました。
また、事前に対策本部長が執筆に関わっている事業再生の書籍も勧めていただいており、 そちらも読み込んでいたため、面接官からの鋭い質問に対しても相手の意図を汲んだ的確な回答ができ、「よく勉強しているね」と高い評価をいただくことができました。
── 面接本番での手応えはいかがでしたか?
長谷川さん 単に正解を出すだけでなく、現場で直面するであろう課題まで含めた切り口で、自分なりにロジカルに回答することができました。面接官の方からは「FASの実務は未経験ながら、業務の解像度が非常に高い。よく準備されていますね」と評価をいただくことができ、その評価がシニアアソシエイトとしての採用という形に繋がったのだと感じています。
── 徹底した対策の甲斐あって、結果としてFAS未経験ながら「シニアアソシエイト」での採用と年収アップを提示されたそうですね。
長谷川さん はい。自分のこれまでの監査法人での経験や専門性が、新しい領域でも正当に評価していただけたことは本当に自信になりましたし、これから生まれてってくる子供や家族に対しても、実力で新しい道を切り拓く背中を見せられたことが何より嬉しかったです。
キャリアの岐路に立つ公認会計士へ。FAS転職で広がる新たなキャリアパス
── これからのBig4 FAS での目標を教えてください。
長谷川さん まずは、事業再生の実務において着実に実績を積み、現場での信頼を得ることが最優先です。これまでは監査人として、あるいはテキスト上の知識として「再生」という言葉を見てきましたが、これからは直接その責任を負う立場になります。財務面の改善はもちろん、事業の細部にまで入り込み、企業の再建に対して実効性のある貢献をしていきたいです。
── 最後に、キャリアの岐路で悩んでいる会計士の方々へメッセージをお願いします。
長谷川さん 私は専門学校出身ですし、エリート街道を歩んできたわけではありません。だからこそ、もし今、皆さんが自分のいる環境に何らかの違和感を抱いているなら、その感覚を大切にしてほしいと伝えたいです。「このまま同じ業務を繰り返していていいのか」という迷いは、現状を変えるための重要なサインだと思うからです。
── 一歩踏み出すことを躊躇している方も多いかもしれません。
長谷川さん 一歩を踏み出すのは確かに勇気が要りますが、本当に恐れるべきは、挑戦して失敗することではなく、動き出すタイミングを逃して自分の選択肢を狭めてしまうことではないでしょうか。会計士という資格をどう活かし、どのような価値を提供していくかは自分次第です。
一人で抱え込まず、CPASSキャリアのような会計士のキャリアシフトに精通した専門家の視点を借りることで、より戦略的な一歩が踏み出せるはずです。










