「転職のタイミング」は今後のキャリアを大きく左右するため、自分にとってベストなタイミングはいつかを見定めることが重要です。
監査法人でキャリアを積んできた公認会計士も、例外ではありません。
そこで、本記事では公認会計士の転職タイミングとして最適な時期や、それぞれのタイミングで転職した場合に得られるメリットについて詳しく解説します。
ご自身のスキルや経験を最大限に活かせる転職を実現するために、ぜひ本記事をお役立てください。
【タイミング別】監査法人で働く公認会計士が転職するメリットとは
(CPASSキャリア編集部 作成)
監査法人で働く公認会計士が転職を考えたとき、どのようなタイミングで転職すべきかは気になる点です。
今回は一般的によくある「監査法人3〜5年目」「6〜10年目」そして「10年目以降」の3段階に分け、それぞれのタイミングでの転職にはどのようなメリットがあるかを解説します。
3〜5年目 スタッフクラス|「転職の黄金期」と呼ばれる理由
監査法人3〜5年目は「転職の黄金期」と言われます。
その理由としては、監査や会計基礎知識がある程度身に付き、公認会計士登録の基準である「3年以上の実務経験」をクリアし、将来のキャリアを考え次のステップへと踏み出しやすいタイミングであるためです。
一方で、監査業務のスキルや経験値のレベルはあまり高くなく、あくまで公認会計士登録を経たうえで、監査領域ではない「次のキャリア」に進みたいという志向性がある方の転職タイミングであるとも考えられます。
新しいことも柔軟に吸収しやすく、ポテンシャルも見込めるため、多くの企業で採用に前向きな傾向があります。
需要と供給がマッチしているため、スムーズに転職を叶えやすいタイミングです。まさに「転職の黄金期」と位置づけられるでしょう。
しかし、注意しなくてはならないのが、転職先の条件だけに目を向けて活動してしまうことです。
意欲さえあれば転職しやすい時期でもあるので、ご自身の長期的なキャリア設計を組み立て、軸を持って転職活動を行うことが重要です。
「転職しやすいから」ではなく、「将来どうなりたいか」という視点を持って取り組むことが、転職成功の鍵になります。
6〜10年目 シニアスタッフクラス|シニア昇格後は引く手あまた!企業が欲しがる”即戦力人材”
監査法人で6〜10年のキャリアを積むと、多くの方はシニアスタッフに昇格し、監査現場のリーダーとしてチームを率いるようになります。
監査の計画・実行、調書作成など監査におけるほぼ全ての業務に専門的な知識を持ち、後進の育成を任されることもあります。
クライアントとの建設的な意見交換、冷静かつ柔軟な対応力にも磨きがかかり、まさに即戦力と言える知見やスキルを身に付けている方が多い層です。
このタイミングでの転職は、応募先の企業や事業所の採用ニーズとマッチすれば、スムーズに進みやすいメリットがあります。
この年次の求人では、監査業務の実務経験だけでなく、マネジメント経験についても求められる傾向にあり、各企業や事業所の基準が厳しくなります。
またこの年次の求職者数も増加するため、必然的に倍率も上がります。いずれにしても、ご自身のキャリア設計に即した転職準備や対策を行う必要があります。
10年目以降 マネージャークラス以上|マネージャー昇格後はしっかり対策を
監査法人10年目以降の公認会計士が転職を考えるなら、ビジネス視点を持ち、企業の課題解決に役立てるスキルを備えているかどうかが重要になります。
10年を超える経験があれば、監査業務のプロフェッショナルと言えますが、自身が武器となる専門領域を持つことも大切です。
例えば、IFRSに精通している、内部統制の構築支援実績が多数ある、金融分野に強みをもっているなどが挙げられます。
それ以外にもコミュニケーション力やマネジメント力などのソフトスキル、語学力や経営課題に対して会計ファイナンス視点での分析力や提案力などがあると、転職活動の際に強みになります。
10年目以降の転職についても、重要なのはこれまで積んできた実務経験を今後のキャリアにどう活かしていくかを考えながら、転職活動を行うことです。
「どんなキャリアを目指すのか」を改めて整理し、その上で自分が今できること(経験・スキル)を分析しましょう。
一方で、監査領域における特定専門性(たとえば、IPO、IFRS、グローバル、金融など)を持ち合わせておらず、汎用的なスキルしかない場合、市場における採用ニーズが下がる年次でもあります。
自身の強みをどれだけ積み上げられるかが、10年目以降での転職成功の鍵を握ります。
会計ファイナンス人材特化型転職エージェントの「CPASSキャリア」は、転職者第一主義を貫いた転職エージェントです。
私たちは単なる転職先の紹介にとどまらず、「理想のキャリアを実現するためにベストな選択は何か」を軸にサポートすることを心がけています。
「どんなキャリアを描いているのか」「どんなキャリアを実現したいのか」というキャリア設計から併走させていただきます。
まだ転職を考えていない方も、ぜひお気軽にご相談ください。
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【転職先別】公認会計士が転職するのに参考にしたい”転職ベストタイミング”
(CPASSキャリア編集部 作成)
監査法人で活躍する公認会計士が転職する際、参考にしたい転職ベストタイミングを以下の7つの転職先別に紹介します。
大手上場企業|昇進を目指すなら30代前半までの転職が多い傾向に
監査法人から大手上場企業に転職を考えた場合、公認会計士の有資格者は重宝される傾向にあります。
一方で監査法人での経験やスキルがそのまま活かせるわけではない、という点を理解しておく必要があります。
大手上場企業でのキャリアアップには「勤続年数」が求められる傾向にあり、自社での経験の積み重ねも評価対象となり、昇進に影響します。
一般的に大手上場企業の経理キャリアは、一般社員、主任、係長、課長、次長、部長と段階的に進みますが、最初の主任になるまでには入社から少なくとも数年程度は必要とされています。
こうした体制から、社内での昇進によってキャリアアップを目指すことも踏まえ、30代前半までの間に転職する方が有利です。
また、大企業は制度や福利厚生が充実しているため、ワークライフバランスが取りやすい点も特徴です。
ライフステージに関わらず、「腰を据えて着実にステップアップしていきたい」という方には、まさにぴったりな職場環境と言えるでしょう。
新興上場企業|裁量や自己成長も◎企業によってはワークライフバランスも取りやすい
さらなる成長を目指す新興上場企業において、監査法人での経験がある公認会計士は非常に重宝されます。
上場企業ではあるものの、大手・老舗企業と比べると、体制や業務が一定化していない部分もあり、体制構築から担う可能性もあります。
安定した基盤はありつつも、裁量・自己成長も望めるという点も、新興上場企業に転職する魅力です。また、大手上場企業と同様に、企業によってはワークライフバランスが取りやすいケースもあります。
新興上場企業において、年収と年齢・年次の相関性は原則としてなく、本人の能力次第で大きく変動します。
傾向として、転職する年代は20代後半〜30代前半の若年層が多くなっています。
ベンチャー・スタートアップ企業|CFO候補も狙える”最強タイミング”とは
監査法人出身の公認会計士は、ベンチャー・スタートアップ企業にとって非常に魅力的な存在です。
ベンチャー・スタートアップ企業ではまだ社内体制が十分でない場合も多く、経理や財務部門の立ち上げから協力し、将来的にCFOとして社内の財務部門を取りまとめてくれる人材を求めている企業も少なくありません。
実務レベルで経理・財務などの経験を積み、将来的にCFOを目指すなら、20~30代前半での転職が多く、ベストな時期と言えるでしょう。
FAS・アドバイザリー|ポテンシャル採用がねらい目
監査法人が主に監査業務を行うのに対し、FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)ではM&Aや事業再生など、企業の重要な局面で財務に関するアドバイザリー業務を行う「課題解決」が主な業務です。
業務はプロジェクト単位で行われ、完了期前は残業も多くなる傾向です。
プロジェクト完了後にまとめて長期休暇を取りやすいため、緩急のある働き方をしたい方にも向いているでしょう。
FAS・アドバイザリーが担う業務は多岐にわたるため、一から習得しなければならない知識やスキルも少なくありません。
そのため、柔軟性が高く将来性を期待されやすい20代〜30代前半で転職する方が多く、”ねらい目”であると言えます。
一方でFASへの転職は、40代のアドバイザリー業務未経験では難しいのが現実です。
ただし、監査法人でアドバイザリー業務を経験しているのであれば、年齢に関わらずFASへの転職との親和性が高く転職を進めやすいでしょう。
コンサルティングファーム|会計系、総合系&戦略系で変わる
コンサルティングファームは、会計系・総合系・戦略系によって事情が変わります。
なかでも会計系では、公認会計士としての経験を活かしやすい傾向にありますが、戦略系では会計ファイナンスの視点だけでなく、経営者(ビジネス)目線での成長戦略立案が求められます。
いずれにしても「コンサルティング」という新たなキャリアを形成する必要があるため、ポテンシャル採用が中心となる20代〜30代前半で転職する方が多いです。
特に総合系・戦略系は、30代よりも20代のキャリアの早い段階で転職を決断する方が多い傾向にあります。
なぜなら、コンサルタントとしての実務経験を積むことでスキルアップ、キャリアアップしていくことができるからです。
また、公認会計士という資格が必須資格ではなく、監査業務の経験についてもあまり重視されない(大きなアドバンテージにはなりえない)場合が多いため、ポテンシャル評価が見込める若年層の採用ニーズが高いと言えます。
会計事務所・税理士法人|BIG4系なら20~30代が◎
会計士事務所や税理士法人、特にBIG4系の大手会計事務所や税理士法人となると、クライアントは中小企業から大手企業まで幅広く、業務内容も多岐にわたります。
海外進出の支援、外資系企業ではIFRSやGAAPなどの国際的な会計基準への対応といった、高度な専門性が求められることも少なくありません。
そのため、新しい知識に対する吸収力や柔軟性がある若手層の採用ニーズが高い傾向にあります。
BIG4系の大手会計事務所や税理士法人への転職を検討している場合は、幅広いポテンシャルや意欲が評価される20代〜30代前半に転職するという方が多くなっています。
証券会社・投資銀行|M&A業務経験があればミドル層も。一方外資投資銀行は20代がベスト
証券会社や投資銀行ではクライアント企業の問題解決やリスク管理、M&Aなどの業務に携わります。
そのため会計の知識だけでなく、コンサルティング能力や交渉力、分析力、そしてマネジメント力などが必要になります。
一方で公認会計士は必須資格ではなく、監査法人の監査や会計に関する業務経験よりもM&Aや投資判断などの経験が評価される傾向にあります。
こうした点を踏まえると、監査業務の経験を活かすよりもポテンシャル採用が見込める20~30代前半での転職が多くなります。
なかでも外資系投資銀行では、35歳未満を応募要件とする場合も多く、20代で転職する方も多くいます。
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公認会計士の転職活動はいつ始める?ベストな時期とは
一般的には、4〜5月の繁忙期明けに活動するのが多い傾向にありますが、繁忙期中から活動を始める場合もあります。
例えば、クライアントに日系企業が多く、3月決算が多い場合、上記の通り繁忙期は4〜5月になります。
この場合は以下のような流れが理想の転職活動と言えます。
- 10~11月に転職活動スタート(年内に内定獲得)
- 内定承諾を経て3月までに退職交渉
- 6月に退職
繁忙期前の年明け〜2月までに退職相談、3月までに退職交渉を終え、繁忙期の業務を通して引き継ぎを済ませることができると、最短で監査法人年度末である6月に退職を実現できるでしょう。
やはり監査法人の往査繁忙期(四半期ごとに発生)の退職を避けることを考慮し、転職活動を進めるとスムーズです。
もちろんクライアントが外資系企業である場合や、アドバイザリー部門で勤務されている場合などはこの限りではありません。
ご自身で調整が難しいなどあれば、転職エージェントと対策を練るのもおすすめです。
転職活動を始める前にやっておくべきこと
公認会計士が転職を成功させるために、やっておくべきポイントを4つ紹介します。
理想的なキャリアプランの再確認と見直し
転職の目的を明確にするため、理想的なキャリアプランの再確認と見直しを徹底しておきましょう。
「とにかく現状を変えたい」といった漠然とした理由で転職活動をしても、転職先で納得のいくキャリアを積めるとは限りません。
公認会計士としてどのようにステップアップしていきたいか、中長期的視点で具体的に考えておくことが転職活動の第一歩になります。
転職先の情報収集
転職先の情報収集も重要です。企業のホームページや口コミなどを確認して、求人だけではわからないリアルな情報をできるだけ集めましょう。
また、業界特化型転職エージェントという”業界に詳しいプロフェッショナル”を利用し、情報収集を深めるのもおすすめです。
会計士仲間など、”横のつながり”を活用することも大切。
これにより、入社したものの「思っていたものと違う」といったミスマッチを防げます。
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実績や習得スキルの棚卸し
自分の実績や習得スキルを改めて棚卸ししておくことも必要です。
自分がアピールできるスキルや経験を整理することで、転職先選びもスムーズになります。職務経歴書の作成、面接対策にもつながります。
転職エージェントやコミュニティの活用
転職活動には、転職エージェントやコミュニティを活用するのも有効です。
なかでも業界特化型の転職エージェントには、登録した人にしか公開されていない良質な求人も多くあるため、より良い転職先を見つけたいなら利用しない方法はありません。
また、先述した”横のつながり”に関連し、会計士のコミュニティに参加するのもいいでしょう。
情報収集ができるだけでなく、紹介によるリファラル採用につながる可能性もあります。
公認会計士の転職活動の平均期間はどのくらい?
公認会計士の転職市場は売り手のため、2〜3ヶ月ほど転職活動すれば、転職先が決まる場合がほとんどです。
とはいえ、先ほど紹介したようなポイントを押さえて準備しておかなければ、いくら公認会計士でもなかなか転職先が決まらないことがあります。
希望条件が多い場合や、希望する企業が少なすぎる場合も、転職活動を妨げがちです。
優先したい条件を絞り、ご自身のキャリア設計に合わせて募集求人数を調整しながら進めていくことが大切です。
まとめ
公認会計士が転職する際の最適なタイミングは、ご自身のキャリア設計によって大きく変わります。
自分のキャリアプランにとってベストだと感じるタイミングで転職活動を進め、希望の転職を叶えましょう。
会計ファイナンス人材特化型転職エージェントの「CPASSキャリア」では、会計に特化した良質な求人を多く保有しています。
会計士ならではの悩みにも寄り添い、内定を取るための勝ち筋を共に見つけていきます。
会計士資格や業務経験を活かした転職を考えているなら、ぜひ「CPASSキャリア」にご相談ください。


記事の監修者
松岡 宏紀
2007年、公認会計士試験に合格。EY新日本有限責任監査法人にて、監査・アドバイザリー業務に加え、社内外での研修講師や研修プログラムの作成・管理などに従事。現在、CPAエクセレントパートナーズ株式会社において、コンテンツの作成、監修を担当。