事業会社の経営企画職は、企業経営に深く関わることができるポジションで、公認会計士にとって魅力的なキャリアのひとつです。
経営企画部門では、企業の中枢として経営戦略の立案や全社横断プロジェクトの推進を担います。
まさに、公認会計士の専門性を最大限に発揮できる領域といえます。
本記事では、事業会社の経営企画職の具体的な業務内容から公認会計士が活かせる強み、年収相場、転職時の注意点、さらにその先に広がるキャリアパスまで、公認会計士が経営企画部門への転職を検討する上で知っておくべき情報を解説していきます。
| 経営企画の業務内容 |
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|---|---|
| 経営企画に転職するメリット |
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| 経営企画で活かせる公認会計士の強み |
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| 経営企画の年収相場 (マネージャークラス) |
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| 経営企画に転職する際の注意点 |
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| 経営企画転職後のキャリアパス |
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経営企画の業務内容|大きく3つの領域に分かれる
(CPASSキャリア編集部 作成)
経営企画部門での業務は多岐にわたりますが、主に以下の大きく3つの領域に分かれます。
企業の規模や業種によって比重は変わりますが、いずれも会社の成長や競争力強化に欠かせない役割を担っています。
経営戦略立案・実行
「経営戦略立案・実行」は、経営企画部門でのメイン業務とも言える領域です。
企業のビジョンや中長期目標を実現するため、市場動向や競合分析を踏まえた戦略を策定し、具体的なアクションプランに落とし込みます。
- 事業環境・財務分析
- 年度予算の編成
- 投資計画の策定
- 新規事業の企画立案
- KPI設計
などの業務を通じ、年間の企業全体の資源配分を最適化します。さらには中長期の視点から、中計(中期経営計画)策定や経営リスク分析を起点に、
- 事業ポートフォリオの見直し
- 撤退・参入判断
- 投資対効果(ROI/NPV)の検証
といったように、業務領域や視点が広がっていくイメージを持つといいでしょう。もっとも計画外の事象は常に起こります。
例えば、市況に大幅な変化があった場合は、いち早く経営陣に共有し、速やかに計画の修正を行うこともあるでしょう。
経営計画を立てアクションプランに沿って実行するだけでなく、イレギュラーな事象が起きたらどう対処するのか等、臨機応変な対応も求められます。
経営基盤の構築・意思決定支援
「経営基盤の構築・意思決定支援」では、経営判断に必要な情報の収集・分析・報告体制を整備し、適切な意思決定をサポートします。
主な業務として、以下が挙げられます。
- 重要指標の設計
- 業績管理の仕組み構築
- 予実管理
- 投資採算性評価
- IR・ガバナンス対応
これらを実施した結果を経営会議資料等にまとめて、経営陣に報告および提案をします。
財務三表の一貫性担保や内部統制の設計など、公認会計士の専門性が強く活きる領域です。
加えて、コーポレート・ガバナンスの強化やコンプライアンス体制の整備も担当範囲に含まれることがあります。
監査法人での監査経験を持つ公認会計士は、内部統制の構築やIR・ガバナンス対応においても即戦力として期待されます。
また、企業規模に応じて役割が異なるのもこの領域の特長です。
例えば、スタートアップや中小企業では管理会計やダッシュボード、決算体制といった”基盤そのものの構築”が中心です。
これに対して大手上場企業では、既存の基盤を前提に、経営会議運営、重要投資の稟議設計、IRの整合性確認など、”経営意思決定の高度なサポート”がメインとなります。
しかし、いずれのケースの場合も、「経営陣の意思決定を支える中枢機能」である点は共通しています。
全社横断プロジェクト推進や変革管理
全社横断プロジェクト推進や変革管理は、組織変革や業務改革を実行する際に欠かせない領域です。
- M&Aの実行
- PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)
- DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進
- 業務プロセスの標準化
など、複数部門にまたがるプロジェクトをリードします。これらのプロジェクトでは、関係部門との調整や進捗管理、課題解決が求められます。
プロジェクトマネジメント能力に加え、部門間の利害を調整し、組織全体を変革に導くリーダーシップが求められます。
また、M&AではDD(デューデリジェンス)、バリュエーション、KPI設計、実行サポート、モニタリングまでを一気通貫で担います。
財務面、そして事業面の双方で、価値最大化を図ります。
経営企画に転職する魅力|公認会計士が経営企画に転職するメリット
公認会計士が事業会社の経営企画部門に転職する最大のメリットは、“経営陣の右腕”として企業の意思決定に関わり、幅広い経験を積める点にあります。
将来に向けた市場価値の向上を見込める
経営企画部門での経験は、公認会計士としての市場価値を大きく高めてくれます。
会計や監査といった”専門スキル”に加えて、経営戦略の立案や事業開発、組織マネジメントなど、”総合的なビジネススキル”が求められます。
業務を通じて、経営に必要なスキルを横断的に身につけられます。
また経営層と直接関わり、意思決定に参画する経験は、将来CFOやCEOを目指す上でも大きな強みになります。
そのほか、コンサルや投資ファンド、スタートアップの立ち上げなど、多彩なキャリアパスの選択肢も広がります。
事業会社への転職でも年収アップや維持が望める
経営企画部門への転職は、事業会社の中でも高年収が期待できます。
監査法人からの転職でも同じくらい、あるいはそれ以上の報酬が目指せます。
年収は企業規模や年次、業績や評価、ポジションなどによって変化しますが、大手上場企業のメンバークラスで600万〜700万円、マネージャークラスで800万〜1,500万円が目安になります。
またスタートアップ企業では、ストックオプションなどの長期インセンティブが期待できる場合もあります。
一方で、ワークライフバランスを考える場合には、注意が必要です。
経営企画部門は、業務領域が広く難易度も高いため、業務量が増えやすく激務傾向にあります。
年収と同様に企業規模や年次、ポジションによって変動しますが、総じてワークライフバランスが取りにくいと考えたほうがいいでしょう。
経営企画で活かせる公認会計士の強み
公認会計士が事業会社の経営企画部門に転職する際、監査法人で培った専門知識や経験・スキルを活かすことができます。
ここでは、公認会計士ならではの強みを3つ紹介します。
経理・財務の専門知識|事業計画書や財務三表の作成など
経理・財務の知識は、経営企画部門で業務を進める上で、大きな武器になります。
公認会計士は、財務会計や税法に詳しく、経営判断に必要な情報を正確に分析することができるのが強みです。
例えば、下記のような知識やスキルが挙げられます。
- 財務三表の分析
- 事業計画書の作成
- 予算管理
- 投資採算性の評価
経験があれば、上場企業の決算短信・有価証券報告書・IR資料の作成支援などの知識やスキルも活かせます。
M&Aに関する経験や知識|デューデリジェンスや財務評価など
M&Aに関する経験や知識は、経営企画部門で特に高く評価される専門性です。
監査やFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)で培ったDD、バリュエーション、ストラクチャリング(スキーム設計)の経験があれば、案件創出から交渉、契約、PMI(※)まで一連のプロセスで即戦力として活躍できます。
定量面の裏付けと運用設計の両立、統合効果のスピーディーな可視化など、定量分析を起点とした業務において、公認会計士は特に高い付加価値を発揮できます。
※Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション):M&A成立後に行われる統合プロセスのこと。
M&Aによるリスクを最小限に抑え、成果を最大化することを目的としている。体制構築や業務計画から実行、管理までを担う。
監査法人での経験|IR作成・総会設定やスケジューリングなど
監査法人での経験は、経営企画部門での業務遂行に大いに活かせます。
例えば、上場企業の監査の経験がある場合、有価証券報告書・決算短信に関する実務知見やJ-SOX/内部統制、監査スケジュール設計の経験やスキルが活かせます。
これらは、IR資料の作成、株主総会の運営、開示スケジュールの管理といったコーポレート・ガバナンス関連の業務に直結します。
監査法人との折衝や、監査に耐えうる体制・仕組みの構築など、監査法人の特徴を知るからこそスムーズに進められます。
【企業規模別】経営企画の年収相場
(CPASSキャリア編集部 作成)
事業会社の経営企画部門の年収は、企業規模や業種、個人の経験・スキルによって大きく異なります。
ここでは企業規模別の年収相場と、それぞれの特徴について解説します。
※スマホの方は横にスクロールできます
| 年収相場 | 特徴 | |
|---|---|---|
| 大手上場企業 |
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| 新興上場企業 |
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| ベンチャー・スタートアップ企業 |
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| 中小企業 |
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大手上場企業
大手上場企業の経営企画部門は、戦略立案、M&A、IR、予算管理など、それぞれの担当領域に分けられています。
特定分野での専門性を深めやすい環境であると言えます。
また、グローバル展開企業では、海外子会社管理や国際的なM&A案件に携わる機会もあります。
英語力や国際ビジネス経験を活かしたい公認会計士に、おすすめの環境です。
大手上場企業の経営企画職は、以下の通り年収水準が最も高く、部長クラスは2,000万超も珍しくありません(企業規模や年次、業績や評価などによって変化します)。
- スタッフクラス:600~700万円
- マネージャークラス:800~1,500万円以上
- 部長クラス以上:1,200~3,000万円
新興上場企業
新興上場企業の経営企画部門は、成長段階や業績により変動幅が大きい点が特徴です。
経営企画担当者が戦略立案からIR、M&A、新規事業開発まで幅広く兼務します。
少数精鋭で一人ひとりの裁量が大きく、経営層との距離も近いのが魅力です。
新興上場企業の経営企画職の年収は、企業規模や年次、業績や評価などによって変化するものの、マネージャークラスで800万〜1,200万円が目安になります。
さらにストックオプションなどのインセンティブ制度が整備されているケースもあり、企業価値向上への貢献を通じて将来的に大きなリターンを得られる可能性があります。
ベンチャー・スタートアップ企業
ベンチャー・スタートアップ企業において、明確な経営企画部門がない場合も少なくありません。
その場合、CFOや経営メンバーとして、財務戦略立案から資金調達、IPO準備、管理体制構築など会社の基盤作りを担います。
ベンチャー・スタートアップ企業の経営企画職の年収幅は大きく、マネージャークラスで700万〜1,000万円以上と、企業規模や年次、業績や評価などによって大きく変化します。
他の企業群と比べると低い印象ですが、ストックオプション付与が期待できる場合がほとんどです。
IPOやM&A成功時には大きなキャピタルゲインの可能性があります。
リスクは高いものの、会社の成長を間近で体感し、自身の貢献が直接的に事業成果に結びつく環境は大きなやりがいに繋がります。
中小企業
中小企業における経営企画部門は、その規模感ゆえに、経理や総務部門が担うことが多くなっています。
もしくは社長直轄の企画室が設けられ、少人数で担うケースもあります。
いずれも少数精鋭で業務対応することになりますが、経営者との距離が非常に近く、直接的なコミュニケーションを通じて経営判断に関与できる点が特徴です。
年収は企業規模や年次、業績や評価などによって変化しますが、マネージャークラスで年収600万〜800万円を目安に考えておくといいでしょう。
公認会計士が経営企画に転職する際の注意点
公認会計士が事業会社の経営企画部門への転職を成功させるには、ミスマッチを防ぐ事前準備が欠かせません。
転職後自身に求められる役割について、十分に把握することが重要です。
まず認識すべきは、経営企画部門での業務内容が企業規模によって大きく異なる点です。
大手企業では戦略立案、M&A、IR、予算管理など専門化された特定領域を担当しますが、中堅企業やベンチャーでは経理、財務、IR、新規事業など幅広い業務を兼務することがあります。
また、会計ファイナンスの専門知識だけでは、転職後「活躍する」ことは難しいでしょう。
事業戦略の理解、マーケティングの知見、業界動向の把握など、ビジネス全般の幅広い知識が求められます。
さらに、コミュニケーション能力も重要です。
経営企画部門は経営層と現場の橋渡し役として、関係部門やさまざまなステークホルダーとの交渉、説得、合意形成が日常的に求められます。
転職のタイミングも慎重に検討しましょう。
事業会社の経営企画部門のポジションは、即戦力採用が基本です。
そのため、監査法人でIPO監査やアドバイザリー経験を経てから挑戦する等、キャリアプランをもとにベストなタイミングで転職を進める必要があります。
経営企画から広がるキャリアパス
ここでは、経営企画部門への転職によって選択できるキャリアパスについて解説します。
| 主なキャリアパス | |
|---|---|
| 組織内の キャリアパス |
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| 組織外の キャリアパス |
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組織内のキャリアパス
組織内キャリアパスでは、まず経営企画部門内での昇進が挙げられます。
マネージャー、部長と段階的にキャリアアップし、最終的には経営企画部門担当の取締役やCEOといった経営幹部を目指す道があります。
経営企画部門から財務部門や経理部門の責任者に異動し、管理部門全体を統括するCFOやCAOを目指すキャリアもあります。
財務戦略の立案から実行まで一貫して関わることで、より高度な財務マネジメント能力を身につけられます。
また、経営企画部門で実務経験を積むことで、新規事業部門の責任者や海外子会社のCFO、M&Aで取得した子会社の経営メンバーとして抜擢されるケースもあります。
例えば大企業では、経営企画部門から他の事業部門に異動し、事業部長やBU長(ビジネス・ユニット長)として事業経営に直接関わるキャリアパスも存在します。
全社視点と事業視点の両方を持つ人材は、組織内で高い価値を持ちます。
組織外のキャリアパス
組織外では、まずコンサルティングファームへの転職が挙げられます。
事業会社での経営企画職の経験は戦略コンサルティングやFASでの採用において強みとなり、実務経験と公認会計士の専門性を組み合わせることで、説得力のある提案が可能になります。
投資ファンドやベンチャーキャピタルも有力な選択肢です。
投資先企業の価値向上の支援や、経営支援を行うポジションでは経営企画職での経験が直接的に活きます。
スタートアップ・ベンチャー企業のCFOなど、経営メンバーに転身する道もあります。
特にIPOを目指す企業では、経営企画と会計の専門性を併せ持つ人材への需要が高い傾向にあります。
創業期から企業の成長を支える醍醐味を味わいながら多様な実務経験を積めるとともに、上場まで導くことによりストックオプションによる大きなリターンも期待できます。
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公認会計士が事業会社の経営企画部門への転職を成功させるには、会計ファイナンス人材のキャリアに精通した専門的なサポートが不可欠です。
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経営企画部門のポジションは求人数が限られており、企業が求める要件も多岐にわたるため、一般的な転職サイトでは最適なマッチングが難しい領域です。
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まとめ
公認会計士が事業会社の経営企画部門に転職することは、専門性を発揮しながら企業経営に深く関与し、市場価値を大きく高める有力なキャリア選択です。
ただし、転職を成功させるためには、長期的なキャリアビジョンを描き、自身の成長につながる企業を選択することが重要です。
その後のキャリアの選択肢を広げることに繋がります。
公認会計士としての専門性と経営企画部門での実務経験を組み合わせることで、転職後もより高度なキャリアステージへと進むことができるのです。
公認会計士として経営企画職への転職を検討されている方は、会計ファイナンス人材に特化した「CPASSキャリア」の専門的なサポートもご活用ください。
あなたのキャリアビジョンの実現に向けて、最適な転職先とキャリアデザインを一緒に考えてみませんか?


記事の監修者
松岡 宏紀
2007年、公認会計士試験に合格。EY新日本有限責任監査法人にて、監査・アドバイザリー業務に加え、社内外での研修講師や研修プログラムの作成・管理などに従事。現在、CPAエクセレントパートナーズ株式会社において、コンテンツの作成、監修を担当。